中南米には気になる弦楽器がたくさんあるのですが、チリにはこんな不思議なギターがあります。なんと、弦の数が25本(または24本)! 基本的には5コースギターのようなのですが、指板から上下にはみ出した弦が4本あり、そのチューニングペグは胴体にあります。そして1コースに3~6本の弦が張ってあるという究極の複弦です。音はこんなです。
日本ではあまり知られていないこの楽器が、私はずいぶん前から気になっておりました。
起源は16世紀後半ころまで遡り、ルネサンスギターやバロックギター的要素もありつつ、とりわけビウエラの要素が強いと言われています。指板上の5つのコースの調弦がDGCEAであるところなどはルネサンスギターと重なります。
このギタロン・チレノは、主としてel Canto a lo Poeta(エル・カント・アロ・ポエタ、詩人の歌)というチリ特有の音楽のために使用されます。この詩人の歌には、イエズス会の布教目的などから始まったEl Canto a lo Divino(神への歌)、人々の日常などを扱うEl Canto a lo Humano(人への歌)、即興の掛け合いで歌うLa paya、などのパターンがあります。時に神聖、時に滑稽、時に風刺的に、定型的パターンと即興の組み合わせの中から、庶民的で親しみのある素敵な独自の音楽を作っています。
参考
https://en.wikipedia.org/wiki/Guitarr%C3%B3n_chileno