メキシコのベラクルスの音楽、ソン・ハローチョの中で、メロディを運ぶ役目なのがレキント・ハローチョ(Requinto jarocho)です。ギターラ・デ・ソン(guitarra de son=ソンのギター)と呼ばれることもあります。前の記事で書いたハラナ・ハロチャが指で弦を全部一緒にジャカジャカとかき鳴らしてリズムと和音を運ぶのに対し、このレキント・ハローチョが弦を一本ずつ雄牛の角のプレクトロではじいてメロディを運びます。そこにハープの透明感のある高音を入れて立体的に音を組み立てていくのが、ソン・ハローチョの音楽の典型的な姿です。
このメロディを運ぶレキント・ハローチョは、4本又は5本の単弦で、4本ならCDGC、5本なら GDGCFの調弦が一般ですが、演奏者によっていろいろです。この4単弦又は5単弦という構成は、南米のスペイン文化圏に同様の構成の楽器が様々あるほか、ウクレレの元になったポルトガル文化圏のカヴァキーニョやラジャンなどとも類似しており、繋がりが感じられます。
楽器の作り方は、ハラナ・ハロチャもレキント・ハローチョも共通ですが、南米特有の作り方として、木のくり抜き成形なので、音は繊細というよりも素朴で、それをプレクトロで強くはじくことで強く勢いのある音にしているようです。大きさは全長50センチから1メートルまで様々なバリエーションがあります。