海を渡った小型ギターたち

中南米における楽器のくりぬき一木作り

昨日の記事でハラナ・ハロチャ(Jarana Jarocha)という8弦のメキシコのギターのことを書きましたが、このハラナという楽器は作り方が面白く、木のブロックをくり抜き成形して作るのです。この動画を見ると作り方がわかります。↓

こういうギター類の作り方は中南米ではかなり広く見られる現象で、例えばアンデス地方のチャランゴ(charango)なども同じ作り方をします。こちらの動画はチャランゴの製作動画ですが、基本は同じ作り方をしています。☟

西洋におけるギターやリュートなどの撥弦楽器は、表板、裏板、側板、ネックなどの各部位を別々に作って、それぞれを薄く精密に削り上げ、精巧に張り合わせて立体を作っていくので、製作工程はもとより、その根底にある木工の思想や哲学がかなり異なるように思います。

西洋的な作り方の例としてリュート製作の動画をご覧ください。↓

この製作方法の違いを見て、私は船の作り方を思い出すのです。

コロンブスがアメリカ大陸近海の島々に到達したとき、現地人の丸木舟(カヌー)にたびたび出会い、驚くほど巨大な外洋にも出られそうなほどの精巧な丸木舟にも遭遇したそうなのですが、中南米の楽器り作り方は丸木舟の作り方に似て、西洋のギターやリュートの薄板による作り方は西洋船の作り方に似ていると思うのです。

ついでに言うと、日本の三味線の胴や棹の木組みは、和船の厚みと幅のある板を組み合わせて作る木組みと似ているなあとも思います。下の写真は順に西洋船、丸木舟、和船です。

船にしても楽器にしても、その土地の風土に根差した作り方になるのが自然なことなのでしょう。その土地に生える木の種類と性質、そこから生まれる道具と技術、その土地の人々の暮らし方、それらに応じて楽器も作り方が変わり、楽器の作り方が変われば音も変わり、音が変われば音楽も変わっていきます。

それは~、いいことだろう~♪ と突然井上陽水の歌の一節を思い出すのですが、それは技術的な巧拙や楽器の優劣という平面の問題ではないでしょう。風土に合わせて自由に展開していくことこそが音楽の豊かさではないかと思うのです。

ではこうして作られたハラナの音をお聞きください。元はスペインの楽器がアメリカの風土でこんな音になります。それは~、いい音だろう~♪

 

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