(弦の選択)
弦は、通常、ガット弦、ナイルガット弦、フロロカーボンの釣り糸の三種のどれかを張ります。伝統的には羊の腸から作ったガット弦を使用しますが、現代では、ナイルガット弦(素材はナイロンだが比重をガットに近づけたもの)やフロロカーボン製の釣り糸を使用することが多いです。ガット弦は古来の音色を楽しめますが、耐久性がやや低く切れやすいこと、購入できるところが限られ国内に見つからなければ海外から仕入れる手間と費用がかかることなどが難点です。ナイルガット弦は、耐久性があり音色も比較的ガット弦に近いですが、これもやはり仕入れに費用と手間がかかることは同じです。フロロカーボンの釣り糸は、入手が簡単で、安価で、よく鳴り、耐久性も十分ですが、ガットに比べると若干金属的な感じの音になり、弦が細めで指のあたりが少し硬い感じになります。釣り糸を使うというと驚かれる方も多いですが、ウクレレでも古楽器でも珍しくないことです。一十舎で使ってみておすすめできる例は次のようなものがあります。
ガット…ドイツのキルシュナー社 DLシリーズ(ガットにニスコーティングをして耐久性を高めたシリーズ。キルシュナー社のホームページからネット購入することになります)
ナイルガット…アクイラ社のニューナイルガット弦(ウクレレ用に市販されているナイルガットはゲージが異なるのでルネサンスギターには向きません。日本には正規代理店がないようなので、イタリア本社やアメリカ支社などからネット購入することになります。アメリカ支社のホームページから購入する方が対応が早いという噂です)
フロロカーボン…フロロカーボン製であれば、どの会社の釣り糸でも使えると思いますが、一十舎では、Duel社の「鮪力」と「BIGフロロカーボン」のシリーズを使っています。ほかには、クレハの「シーガー」などを使う方も多いと思います。釣具屋さんや国内ネット販売で簡単に入手できます。フロロカーボン100%と書いてあるものを選ぶとよいでしょう。
(弦の太さ)
適切な弦の太さは、ルネサンスギターのサイズによって異なりますので、お買い上げのギター毎にお知らせしています。弦の太さ(テンション)の選択は、最後は好みの問題になりますので、最初に張ってあるものを基準に、0.02ミリずつ太く(又は細く)してみるなど、自分の好みのテンションを探るのもよいでしょう。
(弦の張り方)
弾く姿勢でギターを持って見おろしたときに、下から順に1コース、2コース、3コース、4コースと言います。1コースはA(単弦又は複弦ならユニゾン)、2コースはE(ユニゾン)、3コースはC(ユニゾン)、4コースはG(オクターブ)に合わせます。
4コースのGはオクターブで、太い弦と細い弦を並べて張ることになりますが、太い弦を端にもってくる例と細い弦を端にもってくる例と、奏者によってどちらもあるようです。一般には太い弦を端にもってくることが多いかと思います。
(ガットフレット)
ガットフレットは、通常はガットフレット用に売っているガットを回し留めてフレットにするのですが、一十舎のルネサンスギターでは、メンテナンスが容易なように、丸二テグス株式会社から出ている「魚紋」という釣り糸を使用しています。この魚紋は、摩擦の程度がちょうどよく、ガットフレットに利用することができます(他の種類の釣り糸ではうまく留められないと思います)。太さも様々なものが販売されており、手触りも違和感がなく、ガットフレットにするのに大変優れています。
ガットフレットを自分で巻きなおす機会はあまりないので心配はいらないのですが、ゆるんだり傷ついたりした場合も、さほど難しくなく自分でできます。そのための巻き方動画も作成しましたので必要に応じてごらんください。
魚紋は、25号(約1.07mm)、20号(約0.985mm)、18号(約0.935mm)、16号(約0.881mm)、14号(約0.813mm)、12 号(約 0.780mm)、10 号 (約0701mm)などが市販されています。ガットフレットの巻き方は、フレット全部に同じ太さを巻くスタイルと、違う太さのものを混ぜて巻く方法があるのですが、一十舎では16号を基準にしながら、楽器の状態に合わせて微調整をすることにしています。
ガットフレットのメリットは、太さに変えることで弦高調整ができたり、一部にビビリ音が出るときにはハイフレットに向けて太さを順次細くしてビビりをなくすことができたり、指で押してずらして音程を調整できたりなど、金属フレットでは修理が必要な場合でも、ガットフレットの調整で自分で対応できるメリットがあります。そういう調整についても動画にいれてみました。ガットフレットの巻き方動画はこちらをです。
(木ペグ)
木ペグは機械式のペグに慣れていると最初は使いにくいかもしれませんが、慣れると速やかに調弦ができるようになります。木の摩擦で止まっているだけという単純な仕組みなので、ペグを穴に押し込めばしっかりと止まるようになり、押し込みを弱くすればペグを回しやすくなりますので、そのバランスを探りつつ調弦してください。弦をペグに留め付ける方法などはウクレレなどと同じで特別なことはありません。
(ブリッジ)
ブリッジには現代のギターやウクレレと違ってサドルがありませんが、弦をブリッジに結び留める方法はウクレレなどと基本同じですので、特別な技術は必要ありません。
(ナット)
指板の端にある弦を通すための溝が刻んである白い部分をナットといいますが、この部位は後で調整しやすいように比較的取れやすくなっています。弦交換の時にはなくさないようにしてください。
またこのナットに沿って細い棒を入れてゼロフレットにしています。これは古楽器の技法ではなく、ウクレレ製作などで使われる技法なのですが、開放弦での弦高調整がしやすく、溝とこすれて弦が傷つく危険を低減し、開放弦での音のキレをよくする等のよい効果があるので、取り入れています。これも弦交換のときになくさないようにしてください。
(楽器本体の手入れ)
特別なことをする必要はなく、楽器用のクロスやセーム革で拭いて油分や汚れをぬぐうくらいで十分です。絞った布で軽く水拭きしても大丈夫ですが、アルコールは使用しないでください。シェラック塗装がアルコールで溶け出して、くすんだりシミになるおそれがあります。
(ストラップ)
付属のストラップは、自分の体に合うように、適当に長さを合わせて結びなおしてご使用ください。
(その他)
ホールの飾りの彫り込みは裏から補強していますが、他の部位に比べると圧力に弱いので、叩いたり引っ掛けたりしないようにしてください。また彫り込みの隙間から小さいものを入れてしまうと、取れなくなって中でカラカラ音がするようになってしまうのでご注意ください。
(初心者レッスン)
ハルモニーセレスト音楽教室のルネサンスギターの初心者レッスン(岩田耕作先生)をおすすめしています。オンラインレッスン(line、Facebookメッセンジャー、facetime)も教室での対面レッスン(博多駅から徒歩10分)もあります。ウクレレと同じ調弦なので現代人にはなじみやすい楽器なのですが、複弦のタッチを学び、古楽の世界に触れると、世界がぐっと広がるでしょう。お問い合わせは、ハルモニー・セレスト音楽教室のメールフォームから直接岩田先生にお問い合わせください。