海を渡った小型ギターたち

海賊の音楽

「カリブ海の海賊たち」(クリントン・V・ブラック著)という新潮選書の本に、海賊と音楽のことを書いてある部分があります。

「バーソロミュー・ロバーツ船長も厳格に安息日を守る主義で、乗員の楽士たちにも、日曜日には休むように言いつけた。これは彼らにとってはありがたいことだった。というのは、海賊たちは、夜昼を問わずいつでも音楽を要求する権利を持っていたからだ。…なんといっても海賊稼業は非情で、海上生活も死ぬほど退屈なものである。音楽はその退屈をなぐさめてくれる…踊りも同じで、彼らが特に好む娯楽であった。歌は船乗りたちの結びつきをつよめてくれる重要な文化形式であった」

海賊と音楽についてはこれまでも何度か触れて来ました。海賊については当時の資料が残っているので、断片的ではありますが情報が出てくるのです。

他方、当時の軍船や一般の商船については、船上の音楽に関する資料がほとんど見当たりません。当時の軍船や商船では、上級船員と下級船員の格差が激しく、下級船員は人以下のような過酷な扱いを受け、船長の命令ひとつでむち打ちも縛り首も珍しくなかったという話なので、娯楽音楽などは上級船員に限られていたのかもしれません。

あまりの過酷な扱いに耐えかねて逃げ出した一般船員が海賊になる例は非常に多かったそうで、そうであればこそ海賊船の中でいつでも音楽を求め歌い踊ることができたという自由は、海賊たちにとっては非常に大切なことだったのでしょう。

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