イスラム教では音楽は推奨されないと言われますが、それでもアラブ世界の人々は音楽をずっと大切にしてきました。
20世紀にコンサートやレコードが普及するより前から、アラブ世界で音楽が活躍する場としては、結婚式などの祝いの場のほか、サフラという夕べの会があったそうです(もちろん現在も)。
サフラは、夕方から夜にかけて親しい人が家に集まり、談笑したり食事をとったりする会合で、歌手や器楽奏者を招いて歌や演奏を楽しんだりもします。サフラは、家族友人のくつろぎの場であるだけでなく、男だけや女だけが集まってみたり、お金持ちなら有名な歌手を呼んだり、文化人のサロン的な集まりにもなります。話題は家族友人のことから宗教文化政治など多方面に自由に広がり、そこに歌や楽器の楽しみがある…そんなのがサフラだそうです。
音楽を支える場としては、宗教、政治権力、メディアなど大きなもの以上に、サフラのような小さなくつろぎの場が大切なのかもしれません。
参考 「アラブ音楽入門」 飯野りさ著