次の二人のウードの巨匠の演奏を聴き比べてみてください。どちらもヒジャーズ(Hijaz)という旋法(maqām)によるウード(oud)即興演奏(taqsim)。ちなみにヒジャーズという旋法は、最もアラブ的な雰囲気が感じられやすい旋法と言われています。
最初のアリー・イマームという人は非常に伝統的な弾き方をする人で、二人目のムニール・バシールは近代的なウードの形を作った人だそうです。
伝統的☟
近代的
近代的な演奏のムニール・バシール氏は、世界的音楽家としてフランスから勲章を受けています。その音を聞いてみると、どこかギター演奏を思わせる技巧も感じられ、西洋的音楽を聞きなれた耳にはいかにも巨匠の演奏のようです。世界で評価される可能性が高いこのような演奏を学ぶ人がアラブ世界にも増えて、アラブ音楽の近代化や超絶技巧化の動きがあるそうです。
しかし生粋のイラク人の音楽家の中には、伝統的な演奏の方を好む人が実はかなり多いのだとか。アラブ的な情緒を表す言葉として「タラブ」と言う言葉があり、それは「喜悦」「喜び」「娯楽」などを意味するのですが、伝統的な演奏にタラブを感じる人は多く、そのタラブこそが、アラブ音楽の精髄でもあるということです。
こんな話を頭に、もう一度両方を聞いて、アラブと西洋の交錯を楽しんでみてはいかがでしょうか。