あれこれいろいろ

音による町おこし 音の旅

「町おこしをしよう、オー!」、と盛り上がったものの、「観光資源が見つからないなあ…田んぼと川しかないし」ということは、多くの町村共通の悩みでしょう。

「観光」という言葉にしても「sight seeing」という言葉にしても、その字義は「見る」という視覚情報に重きを置く言葉です。

しかし、人間には、目のほかに、耳もあれば、鼻もあれば、口もあれば、手もあるわけですから、普段あまり意識することがない、「音」とか「匂い」とか「手触り」などに重点を置いた町おこしもあり得るように思います。

例えば、町の中にいくつか聴音ポイントを決めておき、そのポイントをたどりながら町歩きを楽しみます。設定したポイントごとに、「林の音」「川の音」「商店街の音」「草原の音」「小学校の音」「海の音」「虫の音」「風の音」などをたどって行きます。聞こえた音をポイントごとにメモする紙を用意しておくのもよいでしょう。そうして所々で立ち止まって耳を傾け書きとめて歩くうちに、ひとくちに草原の音と言っても、植生が少し変わると音が変わることに気が付くかもしれません。林では、静寂の中に鳥の声を追いかけたり、落ち葉を踏む音に心が奪われるかもしれません。

そのような音体験旅行は、心の深層に届く新しい観光体験になるのではないでしょうか。設定したポイントの間に、地元の食を楽しめるお休みどころがあるのもよいでしょう。音を意識の中心に据えていくと、観光資源にならないと思われていた普通の風景も、新たな色彩を帯びて印象に刻まれることもあるでしょう。

こうして聴覚を開くという体験を一日すると、都会の自宅に帰ったあとも、新しい音の存在に気が付いたりして、普段の生活のレイヤーがひとつ深くなるのではないでしょうか。

 

RELATED POST