あれこれいろいろ

米軍の捨て缶は楽器になりやすいの件 スティールドラムとカンカラ三線

前にも少し書きましたが、カンカラ三線は、沖縄戦で何もかもを失った沖縄の人々が、米軍が廃棄した食品などの空き缶を使って三線を作り、収容所で歌い始めたというのがそのはじまりです。

そしてもうひとつ缶を使って生まれたのがベネズエラの北東部のカリブ海に浮かぶトリニダード島に生まれたスティールドラム(スティールパンともいう)です。こちらは缶は缶でも石油のドラム缶。昔、この島にアフリカから連れて来られた人々は、ドラムで対話ができるということで、密談を防ぐ趣旨からもイギリス植民地政府によってドラムの使用を禁じられていたという歴史があったのですが、1930年代にドラム缶を直そうとしてるときに偶然音程が叩く部位で異なることに気が付いて最初のスチールドラムが生まれ、第二次大戦後、米軍基地に残された大量のドラム缶の存在もあって急速に一般化しました。ドラム缶を叩く部位で音程が変わることからさらに発展して、ドラム缶を熱して円形の凸面を作り、大きな円形なら低音が出て、小さな円形なら高音が出るということで、缶をメロディ楽器に仕上げてしまったのがこの楽器のすごいところです。

スティールドラムはやがてカリブ海諸国に広まり、さらには独立後のトリニダード・トバゴ共和国政府が、先進国への移民を奨励したこともあって、世界中に広まりました。世界の様々なミュージシャンにも使われて有名になり、「20世紀最後にして最大のアコースティック楽器発明」とも呼ばれ、現在はトリニダード・トバゴ政府から国民楽器に認定されています。

日本では、郷ひろみの「セクシー・ユー」でスティールドラムが使用されて有名になったとのだとか。

米軍が缶を捨てると地元の人が楽器にするのですね。音楽は、「こんなものいらねえや、捨てちまえ」という無価値物からも生まれることができる、というのがこの話の深イイところです。