海を渡った小型ギターたち

ソンハローチョSon jarocho

ソンハローチョ(Son jarocho)は、メキシコのベラクルス州を中心に広がる伝統的な庶民の音楽ジャンルです。私はこれに以前からかなり惹かれていて、ルネサンスギターなどが庶民層でどのように弾かれていたのかを考えるとき、多くのヒントがあるのではないかと思っています。まずはどんな音楽かをご覧ください。

ソンハローチョは、ベラクルス州で特に有名な、踊りと歌と演奏とでコミュニティーの人々が集うパーティ、ファンダンゴで演奏されます。

楽器は、ハラナハロチャ、ハラナレキント、ハープ、カホン、ヴァイオリンなどで、その循環する演奏と交互に入る歌と板張りの台(タリマ)の上で踏み鳴らす踊りが、数十分続きます。演奏は、ポリリズム(リズムの異なる声部が同時に奏されること)、シンコペーション(拍節の強拍と弱拍のパターンを変えて独特の効果をもたらすこと)などの特徴がみられます。

起源は植民地時代にさかのぼり、スペイン、アメリカ先住民、アフリカの要素が混在しています。またバロック音楽の流れも指摘されます。主として使用される楽器のハラナはバロックギターの影響が強いと言われます。

ハローチョは形容詞で、メキシコのソタベント地方に住むアフリカ系住民の文化に属していることを示し、ソンは名詞で、歌と言う意味で、メスティーソ(白人とインディオの混血)の様式的特徴を含みます。

ソンハローチョは、女性二人で踊るもの、男女ペアで踊るもの、男性と2人以上の女性が踊るものがあります。

踊りは、主として女性がタリマ(Tarima)と呼ばれる板張りの台の上で足を踏み鳴らしながら踊ります。これをサパテアード(Zapateado)とい、それはソンハローチョから独立した踊りであると同時に、タリマを踏み鳴らす音が音楽を補完してソンハローチョを完成させます。

音楽の中に交互に即興や定型の歌が入り、これをベルサダといいます。歌の内容は演奏されるソンによって異なり、神や主要な議論を歌うもの、愛のテーマを歌うもの、暗い内容と明るい内容を歌うものなどがあります。それぞれのソンは独自の展開を見せ、通常は挨拶で始まり、メインテーマへと進み、別れの言葉で終わり、ソンにどうアプローチするか、その内容はどうあるべきかというルールがあります。

ソンハローチョには決まった節がなく、あるのは、それぞれのソンに特徴的なテーマと、歌い手自身のスタイルに対応したテーマ展開です。

ソン・ハローチョの詩の例はたとえばこんなです。

鳥のcú

小鳥よ、君は美しい。
そして美しい色をしている。
そしてきれいな色をしている。
pajarito eres bonito.
でも、あなたはもっときれいです。
もし、あなたが私の願いを聞いてくれるなら
小さな紙片を持って
私の恋のお相手へ

下の動画は、言葉はわかりませんが、ソンハローチョがコミュニティーにどんなふうに根付いているのかの雰囲気が伝わってきます。

 

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