人の可聴域は、20Hz~20000Hz(20kHz)。44kHzまで録音しているCDは、人の可聴域をカバーして余りあり、それで必要十分というのが従前の考え方でした。
ちなみに様々な生物の可聴域は下図のようになっており、人の可聴域はかなり限定的です。
現在は研究が進んで、超高周波が人の音楽聴取に大きな影響を与えることがわかっています。超高周波成分を含む音を聴くと下図のように脳幹や視床といった脳深部の神経活動を劇的に活性化し、快適性と関係が深いα波が大きく増加します。また、前帯状回などの脳の報酬系で活動上昇が観測されます。
超高周波成分の効果があらわれるにはいくつかの条件があります。☟
・超高周波成分を含む音を10数秒以上聞いていないと、その効果はあらわれない。
・超高周波数成分がなくなっても、その効果は100秒前後残留する。
・超高周波数成分だけを聞かせても効果は表れず、可聴音と超高周波数成分が共存するときにのみ、その効果があらわれる。
・40kHz以上の高周波成分を16kHz以下の可聴域成分とともに呈示すると、脳の深部構造の活性が上昇するが、32kHz以下の高周波成分を16kHz以下の可聴域成分とともに呈示した場合、脳の深部構造の活性は逆に低下する。
・イヤホンやヘッドホンからの聴取だけでは効果が現れず、スピーカーから、あるいはイヤホン(可聴音)+スピーカー(超高周波)からの聴取で効果が現れる。スピーカーから超高周波を再生しても身体を遮音すると効果はほとんど消失する。このことから、超高周波数の受容は、耳(聴覚)からではなく、体表面から行われていると推測される。
というわけで、耳からの可聴音と体表面からの超高周波数とが相互作用して超高周波にかかわる情報のゲートが開放されるという、音の二次元知覚モデルが提案されています。
おもしろいですね。人は体でも音を聞いていると言えそうです。
参考 https://www.jstage.jst.go.jp/article/itej1997/55/12/55_12_1616/_pdf