生成AIの世界では、視聴者みなが同じドラマを見るのでなく、ひとりひとりが異なるドラマを視聴する世界が生まれるかもしれないという話を最近聞きました。
ドラマの視聴態度はひとりひとり異なり、たとえば推しの俳優をずっと目で追っている人もいれば、恋愛シーンになると目が離せなくなる人もいれば、戦闘シーンになると集中度が上がる人もいます。そのような視聴者ごとの反応をモニターしながら、視聴率が最大化するように、生成AIが瞬時にドラマを視聴者ごとに作り変えて、視聴者ごとに最適化されたドラマを生成しながら配信するというわけです。
この理屈からすると、音楽もまた、ひとりひとりが異なる音楽を聴くという世界が生まれるのかもしれません。音楽を聴いているときの感動の様子を呼吸脈拍血圧ドーパミン放出度などをモニターしながら、感動を最大化するように瞬時に生成AIが音楽を生成改編していくのを聴くという世界です。
つい数十年前までは、日本人みんなが同じ曲を聞いて国民的一体感を感じるような世界があったのが、やがて世代ごとに異なる音楽を聴くようになり、さらに音楽の内容が多様化すると人それぞれ異なる音楽ジャンルを聞くようになり、そしてついにジャンルどころか曲自体が人それぞれ時と場合ごとに異なるようになる、というわけです。
きっとそんな世界もそう遠くなく、ここ数年のうちに生まれてくるのかもしません。
ただ、音楽には、その場の人が音楽を共有して同期・共感することの喜びという側面があると思うので、同じ音楽を聴くという現象が消滅することはないように思います。