木材の自然乾燥により、屋外で3~4年ほどで、周囲の湿度と釣り合う平衡含水率(日本では含水率15%ほど)に到達すると乾燥は止まり、以後は空気が乾燥すると水分を放出し、湿ってくると吸収する調湿の状態で安定します。しかしそれ以後も大気中で長期間放置すると、吸湿性が少しずつ低下してより低い平衡含水率になるという変化が起こります。
楽器材において、長期間のシーズニング( 酸素および紫外線の作用などによる木材の枯しseasoning)あるいはエイジング(数十年から数百年にもわたる吸湿の繰り返しと酸素などによる木材の老化ageing)を重視するのは、通常の自然乾燥を超える、平衡含水率自体の低下を視野に入れているのだと思います。
もうひとつ注目すべき点は、 木材が平衡含水率に到達するのが、吸湿によるか乾燥によるかによって、平衡含水率が異なることです。この現象を、ヒステレシス hysteresis とよびますが、同一木材であっても、より低い含水率から吸湿によって平衡含水率に到達した方が、より高い含水率から乾燥によって到達したときよりも、平衡含水率が低くなるのです。ですから、木材を人工乾燥によって、一旦大きく含水率を下げておくことは、その後の吸湿を考慮しても、木材の含水率を下げる効果を生むことになります。
参考・レクチャー 木材中の水