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中世ヨーロッパの楽器奏者序列 トランペット吹きが一番

中世ヨーロッパの文献では、「トランペット吹き、笛吹き、フィドル弾き」という順番で書かれるのがひとつのパターンで、昭和日本の「おとうさん、おかあさん、子供たち」というのに似て、当時の楽器の序列感覚を示していると考えれるのだそうです。

その序列が生まれた理由は当時の権力者の権力誇示と関係があります。中世においては、トランペット(トロンボーンも)を吹く天使が天上の統治者の力を告げるというイメージがあったため、当時の権力者であった教皇・王・領主・司教などは、高らかに鳴り響くトランペットの響きとともに人々の前に登場するのを好んだのです。例えば、皇帝フリードリッヒ3世は、1471年にニュルンベルクに入るとき、トランペット奏者21人とティンパニ奏者3人を伴いました。実際このような演出は人々の耳目を集めて権威を示すのに高い効果を発揮したようです。そして貴族や格の高い市民もまた、管楽器をステータスとして使うことを好み、その結果、社会全体の感覚が、トランペットが一番でその次が笛吹き、フィドルは管楽器に及ばない、という序列になったようです。

当時の放浪楽師たちにとっては、管楽器を習得すれば貴族や富裕市民の前で演奏する機会を得て気前の良い報酬を期待できる上に、もし常雇いになれれば不安定な放浪から離脱できるし、万一宮廷のトランペット吹きになれたらもうこれ以上の僥倖はないと、そんな感覚であったようです。

では最後に高らかに鳴るトランペットの響きをどうぞ。

トランペット

参考 中世ヨーロッパ放浪芸人の文化史 マルギット・バッハフィッシャー著

 

 

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