現代は人工乾燥技術があるので、平衡含水率(日本では15%くらい、ヨーロッパでは屋外で12%くらい)を超えて木材を乾燥させることができ、大抵の有名楽器メーカーは自然乾燥に人工乾燥を加えて楽器用材として最適な含水率(6~10%くらい)を実現しています。
では人工乾燥技術がなかった17~18世紀ころのストラディバリやグァルネリが使用した木材の乾燥の程度はどうだったのでしょうか。
2016年に台湾大学の研究者によって発表された論文で、ストラディヴァリやグァルネリは木材を処理するために化学薬品を使用し、それには主にホウ砂、亜鉛、銅、ミョウバン、および石灰水が含まれていたことが判明しました。
その科学薬品によって十分な処理を受けた標本では、ヘミセルロースの断片化とセルロースのナノ構造の変化が見られ、木材の水分量は未処理のものに比べ約25%低減したそうです。
先日、木材の人工的な処理によりセルロースの管状構造を押しつぶし絡まり合うことによって、木材が鋼鉄よりも強くなる(自然の木材より強度11.5倍)という最近の研究のことを書きましたが、300年も前にストラディヴァリが施した化学薬品処理が類似の効果を発揮しているように思われ、非常に興味深いです。
参考・https://note.com/musing/n/n9fb2563283db
https://rearpond.mystrikingly.com/blog/7a4a78b1e23