あれこれいろいろ

説話と琴の世界的な伝播 カレワラ神話と日本神話

昨日の記事で最後に付け足して、「日本の和琴を分析しようとすると、世界規模の影響が多方面から交錯して積層している可能性も見えてきます」と書きました。

この点に関連するのですが、「カレワラ神話と日本神話 小泉保著 NHKbooks」という本が、北欧、ギリシャ、アフリカ、アジア、日本などの神話や説話の共通項を詳細に比較検討しています。

この本によると、日本とフィンランドを含めて各地の神話や説話に共通することが多い項目としては、

・天地の始まりとなる宇宙卵の発想 ・求婚に際して実現困難な課題を突き付けられてクリアしていく課題婚のストーリー ・冥界などから逃走する際に3つのものを順次投げつけて追跡を逃れようとする呪的逃走のストーリー ・バラバラの遺体をかき集め神に祈って軟膏を塗ってよみがえらせる再生のストーリー ・隠れた天体(太陽や月)を解放する天体解放のストーリー ・異属婚姻と見てはならぬのに見てしまうストーリー ・宇宙樹のストーリー ・母子兄妹近親相姦のストーリー などなど、多岐にわたります。

それらのストーリーが、アフリカ、ギリシャ、北欧、アジア、日本という広がりの中で確認できるとのことで、フィンランドの神話学者М・ハービオは、フィンランドまでの伝播経路として、

エジプト→ビザンチン・ギリシャ→ロシア→カレリア(フィンランド南東部付近)

という伝播経路の仮説を立てたそうです。そしてこの本では、ここに日本を加えて、

という流れの仮説が書かれていて、私も同感です。そして私としては、その流れに楽器(竪琴、カンテレ等の膝上琴、そして和琴)の流れも重ねて考えたいと思っています。楽器の基本的な類似性の上に、説話の中で演ずる楽器の呪術的な役割にも類似性が見られるからです。

とはいえ、アフリカ、ギリシャ、ヨーロッパ方面から、日本に流れてくる時期や経路はいまだ謎なままですが、一度に一経路で来たというよりは、複数機会に複数の経路(シベリア等北方経由、朝鮮半島経由、中国南部から沖縄経由、東南アジア方面から直接に海路経由等)で伝わって混交するというのが、文化というものの一般的な伝播の仕方なのかなと思っています。