あれこれいろいろ

踊りと扇

日本の踊りには、扇がよく登場します。巫女舞、日本舞踊、ジュリアナ東京など、時代とともに、なかなか多彩。

16世紀ころ、中国や日本の扇がヨーロッパに伝わり、以後19世紀まで日本からも大量に輸出されたほか、ヨーロッパでも盛んに作られ、パリには100件以上も扇屋さんがあったとか。扇は貴族女性の必需品となり、舞踏会の必須アイテムとなります。

舞踏会の必須アイテムといっても踊りそのものに使うわけではなく、男女間のコミュニケーションツールとして進化をします。

以下、「ダンスの歴史 ロバート・ヒルトン著」 からの抜粋です。☟

扇は女性の意思を伝え、相手と踊ることに関心がある(あるいはない)ことを示す手段だった。たとえば、もし女性がゆっくりと扇をあおいだら、それは彼女がすでに約束済みで、求めに応じられないことを意味した、反対に扇を素早くあおいだら、それは彼女がまだ誰とも約束がなく、自由の身であることを意味した。そしてもし扇を閉じたら、それはいかなる約束の可能性もないことを意味した。一方、結婚相手となり得る男性へのより明確な意思表示は、扇を何度も開いたり、閉じたりすることで、これはその女性が相手に関心を持っていることを意味した。

ほかにも様々な意味があったようです。たとえば、

・閉めて差し出す → 私のことを好きですか

・扇で頬を横になぞる → あなたを愛しています

・扇を落とす    → 友達でいましょう

・扇で手をなぞる   → あなたなんか大嫌い

・右手でクルクル回す → 私は他の人が好きです

・ゆっくり扇ぐ → 結婚しています

などいろいろ。

スペインには扇言葉の辞典があって大流行したのだとか。

奥ゆかしいようでもあり、鼻もちならないようでもあり、どちらか判断できない私などは恐れおののいて逃げ出してしまいそうな世界ですが、鳥が求愛ダンスで羽根を駆使するのにも似て、DNAレベルから来る求愛行動なのかもしれません。