あれこれいろいろ

琵琶の秘曲という発想

日本の音楽には「秘曲」という発想があります。

例えば、平安時代初期に遣唐使の留学生であった藤原貞敏が、唐の琵琶の大家から多くの琵琶の独奏曲を学んで帰国し、それらを「秘曲」として後継者数代に伝承されたのですが、鎌倉時代以後、秘曲の伝授を惜しむあまり結局伝承されず廃れてしまったそうです。

また、平家物語を語る平家琵琶では、200駒で構成される平家物語のうち、特に重大とされるものを「秘曲」「大秘事」「小秘事」として容易に伝授を許さず、江戸時代以降、結局全段の伝承は途絶えてしまったそうです。

自分が人から教わったものを他人には教えないという発想がなんだか貧しい感じがして残念ですが、「一子相伝」「唯授一人の曲」などの世襲的組織的伝承システムの中で、芸の独自性と正統性の顕示、秘曲伝授をテコにした上下支配秩序維持、秘曲伝授の際の経済的授受、他の団体や流派との差別化による利権の独占など、音楽システム全体の問題が背景にありそうです。

大事なものは簡単には教えないという発想が、日本の様々な伝統音楽分野に見られますが、それが音楽の伝承、広がり、発展を阻害する要因になったように思われます。

音楽に秘密なし、がこれからの時代は吉でしょう。

参考 邦楽ってどんなもの 楽器編 星野榮志著

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