作レレ

パロサントとホワイトシカモアのロングネックウクレレ

写真のウクレレは、トップがパロサントで、バックとサイドがホワイトシカモア(ヨーロピアンメープル)のロングネックバージョンのウクレレ(ウスレレ)なんですが、ようやくできあがって弦を張って弾いてみたところ、音があまり伸びないのです。音量もどちらかというと小さめで、特に一弦の音の伸びがいまひとつで、ポツンとしたような音になります。音の減衰が早いのです。

年末に出来上がって、弦がボディになじむ様子を観察していたのですが、今のところ音の傾向はあまり変わらないようです。いろいろな弦を張り替えてみましたが、どれももうひとつでした。これまで作ったパロサントウクレレの特徴は、音がよく伸びて、柔らかく潤いのある共鳴がわーっと広がるというところにあったのですが、このウクレレはパロサントの音の特徴があまり見えません。

木工の観点からは、丁寧によくできてきれいな作品です。使っている材もかなりの高級材で、木目も美しく、工芸品として魅力的な一品に仕上がっていると思います。

しかし残念ながら音が想定範囲に入ってきませんでした。ごく普通のウクレレの音ではあるのですが、一十舎のウクレレは、「わあ、いい音!」という声がまず出るものをイメージしているので、その声が出ない…あるいはもしかしたらお客様はがっかりするかも…そのように予測されるウクレレはやはり外には出せません。

新しい試みをすると、こういうことはよくあることで、新しい試みは、結果がどうあれかなり貴重なデータです。今までの経験上も、失敗作はとても貴重でした。そこから一十舎の方向性が新たに定まることが多いのです。ですから失敗作は結構ありがたいことでもあり、そういう意味で、想定を下回りましたが、内心失敗とはあまり思っていないところもあります。貴重な試みをたくさんしましたから経験値がかなり上がりました。

この一本は、全体が白くて、なんだか神社に奉納したいような神々しさがあります。ですから手元に置いて神棚に飾っておこうかと思います。前の失敗作も家の神棚に飾ってあるのですが、なぜか失敗作は神々しい感じがするものが多いのが不思議です。今後は失敗作は神の一本と呼びましょうか。何か大切なものを運んできてくれることが多いので。(*^_^*)

ホワイトシカモアのウクレレに期待を寄せていただいていたお客様にはご期待に添えず申し訳ありませんでした。m(__)m