上の絵は13世紀の「聖母マリアのカンティガ集 (Cantigas de Sancta Maria)」の挿絵です。
カンティガとは頌歌と訳され、要するに聖母マリアを褒めたたえる単旋律曲集です。ガリシア・ポルトガル語で書かれ、420曲からなる頌歌が載せられ、様々な美しい挿絵があります。
その挿絵の中の1枚の上掲の絵は、中世イベリア半島の2種類のギターが同時に見られる絵として有名です。
左側のギターは、la fidicula latina (フィディキュラ ラティナ)、すなわちラテンギターという意味で、古代ローマ勢力圏で成立したギターです。
他方右側のギターは、la kuitra araba で、すなわちムーア人のギターの意味で、イスラム勢力圏で成立したギターです 。
イベリア半島はもともとローマ帝国の一部で、その後イスラム王朝の支配下に入ったため、中世には両方の文化のギターが併存していたのです。
この中世の2種類のギターは、ルネサンス時代以前のギターの元であろうと一般に考えられています。
この2つの楽器の大きな違いはボディの底部にあり、ラテンギターはフラット、ムーアギターはカーブしています。またヘッド部がラテンギターは前方に角度をつけて曲がり、ムーアギターは顕著に湾曲します。
中世以前のギターの起源をさかのぼろうとすると、古代ギリシャや古代エジプトなどの紀元前の話に飛んでしまうのが一般で、詳細不明な期間が非常に長いのです。
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