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音楽視聴時のゾクゾク感とドーパミン 人間とアリとキリギリスと西洋ミツバチ

音楽を聴いて鳥肌が立ったりゾクゾクしたりしているとき、脳内では快楽物質のドーパミン(dopamine)が放出されています。

ドーパミンは食事、生殖行動、睡眠など生物学的欲求が満たされたことの報酬として放出される物質であり、人間の生存能力を高める機能を有しています。それなのに、音楽という個々の人間の生存能力と直接関連しない行動に対して、ドーパミンがかくも頻繁に放出される理由は不可解とも言われています。

もしかしたら、人間のあらゆる社会に音楽が存在するという事実から考えると、音楽は人間の生存能力の根幹にかかわる機能を有しているのかもしれません。だからこそ、脳は音楽に頻繁に反応してドーパミンという報酬を人間にもたらし続けているのではないでしょうか。

アリとキリギリスの童話では、働き者のアリは社会の役に立つ存在なのに対し、キリギリスは音楽にうつつを抜かす役立たずでアリに助けてもらうしかないお荷物として描かれます。しかしドーパミンの放出を見れば、脳はキリギリスの奏でる音楽に生存能力向上という価値を見出していることは明白です。

キリギリスが音楽を奏でるとき、ドーパミンはキリギリスの脳ばかりでなく、それを聞くアリの脳にも放出されるという事実は重要なように思われます。それがアリとキリギリスの両方を含む社会全体の生存能力を高める機能を有しているのかもしれません。

アリとキリギリスは働く人間と音楽を奏でる人間の比喩ですが、次は本物の虫の話。西洋ミツバチの女王蜂と働き蜂では、脳内で合成されるドーパミンの量が大きく異なり、女王蜂は働き蜂の3~4倍多くドーパミンが存在することが判明したそうです。そのドーパミンが蜂の社会全体でどのような働きをしているのかはまだ不明ですが、ドーパミンは役割分化がある社会全体の生存能力を高める機能を果たしているのでしょうか。

音楽とドーパミンと社会の関係に幸福な社会の鍵のひとつが潜んでいそうです。

参考

音楽のゾクゾク感

ミツバチとドーパミン