スペインの作家の Don Sebastián de Covarrubias y Orozcoは、1611年の文献で、ルネサンスギターについて、「それはrasgadoでかき鳴らして弾くときは特に簡単なので、ギター演奏家でない馬の少年はいない(馬子にも弾ける)」と書いていることは昨日も書きました。
17世紀初頭の段階で、rasgadoという具体的な奏法に触れているのは重要です。ルネサンスギターは発生初期の段階から庶民の間ではrasgadoで弾かれることが多かったことが推測できます。
rasgadoというのは、一般用語では「引き裂かれた」という意味ですが、演奏用語としては「かき鳴らし」という意味で、指や腕の上下動で和音を素早く連打する奏法です。現代では、極めて高速な超絶奏法をイメージしてrasgadoということが多くありますが、広い意味では指でジャカジャカする奏法全般(ストラミング、ストローク、カッティングなどの全体)をrasgadoと言うこともあるようです。
1611年の段階でrasdadoと書いているのは、誰でもできる簡単な奏法の例として出てきているので、この広い意味のrasgadoの方でしょう。読み方は、日本語では、ラスゲアードと表記されます。
rasgadoはイベリア半島起源の様々なギター形の撥弦楽器の定番的な奏法のようです。フラメンコギターの踊りの伴奏のほとんどはrasgadoで弾かれるそうですし、ポルトガルのカヴァキーニョ、メキシコのハラナハロチャなどなど、rasgado奏法の動画がたくさん見つかります。Rasgadoの魅力は、だれでもできる簡単さと超絶技巧の興奮との両方があって、弾いても聞いても踊っても楽しめる人を選ばないオールマイティさでしょう。庶民の楽器として広がり人気が続く肝はここにあるのかもしれません。
具体的なやり方は実に様々あるようです。とりあえずいくつか動画を集めてみました。最後のメキシコのものなどは、楽器自体がルネサンスギター的で、16世紀17世紀の庶民のルネサンスギターの演奏はこんな感じだったかもなどと想像がふくらみます。
ポルトガル カヴァキーニョのラスゲアード↓
現代ギターのラスゲアード フラメンコなど↓
ポルトガル ビオラブラゲサのラスゲアード↓
メキシコのハラナのラスゲアード↓
参考