私の父方の祖父は私が生まれたときには亡くなっていて、私は写真でしか知らないのですが、私は幼児の頃からその祖父の写真が好きでした。笑顔の感じが大好きだったんです。
半年ほど前、父の葬儀がありました。その葬儀のとき、私は初めて会う遠い親戚の人から、「あなたのおじいさんは、自分で工夫してバイオリンを作って弾いてたんだよ」という話を聞きました。
びっくりしました。初めて聞く話でした。
祖父は明治生まれで、牛に鍬を曳かせて米を作り、山奥に入って炭焼きをし、人里離れた東北の寒村で暮らしていた百姓なのですが、そんな人が、明治大正という時代に、自分でバイオリンを作って弾いていたというのです。何日も山奥に入って炭焼きをするときなど、山中にバイオリンを持ち込んで、山にバイオリンの音を響かせたりしていたのでしょうか。
私が祖父の写真に惹かれる理由がわかったような気がしました。祖父は私と同じものを見ている人のような気がしました。私がウクレレを作ることに惹かれていったのも、祖父の時代から続く必然の中にあるようにも思えました。もしかしたら、祖父よりもっと前の時代にも、同じような人の流れが続いているのかも、などという気もしました。
明治大正を生きた田舎の百姓の祖父が、いつどこでバイオリンに出会ったのか不明ですが、あるときどこかでバイオリンに出会って、これを自分も弾きたいという衝動にかられ、バイオリンを買うことは難しい環境の中で、自分で切り出した木から工夫を重ねてバイオリンを作り上げたのでしょう。
親戚からその話を聞いたとき、私は祖父に自分自身を見るような愛しさを感じました。(*^-^*)