前々回、伝統的なギター(古楽器ギター、クラシックギター、アコースティックギター、ウクレレ等)では、表板(響板)・横板・裏板の材質が、音質を大きく変えるということを書きました。弦の振動→板の振動(材木の振動)→空気の振動→鼓膜の振動と順次変換されて音が認識されるわけですから、板の種類や材質が音に直接的な影響があるのは当然と言えます。
そこで次に気になってくるのが、エレキギターの場合はどうなんだろうということ。エレキギターでは、弦の振動→ピックアップで電気信号化→アンプで電気信号を増幅→スピーカーで音(空気振動)に変換→鼓膜の振動という順になるので、木の振動が直接介在しないのです。
これについてはエレキギター愛好者の間でも人の数だけ意見があると言われるほどのようですが、一般的には、ピックアップ・アンプ・それらを繋ぐケーブル・弦の素材・演奏技術等と並んで、ボディ素材やネック素材も音に影響するというのが一般的な説明のようです。様々な意見はこちらのページで見られます。→ https://www.quora.com/Where-does-the-tone-come-from-in-an-electric-guitar
このような状況の中、話題の実験動画がこちら☟。ボディ材の音への影響があまりなさそうと言う方向で理解されている動画です。
また、この問題については、次のような研究論文もあります。
9本の異なるボディを用意して同じネックとピックアップのセットで弦を振動させて音のスペクトルを比較した結果、それらの間に音の大きな違いは見られなかったというもので、振動する弦からのエネルギーは楽器の本体にごくわずかしか到達せず、弦に戻るエネルギーはさらに少ないということが示されているそうです。その論文はこちらから閲覧できます(ポルトガル語ですが)。→https://econtents.bc.unicamp.br/inpec/index.php/physicae/article/view/13384
これらの実験によって議論に決着がついたかというと、どうもそうでもないようで、材が違えばやはり音も違って聞こえるという体験的な意見もあるらしく、今後も議論百出は続くのかもしれません。