イエズス会と音楽にまつわるエピソードは多すぎて書ききれないほどあるのですが、それは当時の多様な民族や文化が交錯するときに、緩衝材のように音楽が登場するからです。
ヨーロッパとアジアと南米、仏教とアニミズムと一神教、狩猟採集文化や定住文化などいろいろな民族文化など、世界中に散らばる多様性を、イエズス会はカトリックの単一の基準に統合しようとして奥地に分け入って行ったわけですから、必然的に多くの衝突・混乱・抵抗が予想されました。その衝突・混乱・抵抗の緩衝材として、また一気に人々をカトリックの世界観に引き込んでしまう舞台装置として、イエズス会は音楽を一貫して利用し、ゴア、日本、マカオ、南米など世界中の宣教地でそれはかなり有効に機能しました。
その様子がわかる本や論文には、次のようなものがあります。とりあえず私が読んだものをご紹介。
私は多様性の表現としての音楽に興味があるのですが、単一性に統合しようとするような音楽事象にも、人間・社会・地球を考える多くのヒントがあるように思います。
文献
「洋楽伝来史」 キリシタン時代から幕末まで 海老澤有道
「幻の帝国」 南米イエズス会士の夢と挫折 伊藤滋子
「宣教と改宗」 南米先住民とイエズス会の交流史 金子亜美
論文
「キリシタン布教における琵琶法師の役割について」 ホアン・ルイズ・デ・メディナ(安達かおり訳)
「音楽面からみるイエズス会の東洋宣教」 16世紀半ばから17世紀初頭におけるゴア、日本、マカオを対象として 深堀綾香