NHKの「映像の世紀 バタフライ・エフェクト」を毎週見ているのですが、音楽が非自由主義国家の扉を開ける力になった、というテーマの回が数回あって、印象に残ったのでまとめておきます。
先週今週と二週連続でやっていたのがビートルズのことで、ソ連の若者が、妨害電波で作られた雑音に混じってラジオから聞こえてくるビートルズに体の中の血がめぐるような興奮を覚え夢中になったとか、規制当局の目を逃れるために使用済みレントゲン写真で製作したレコードでビートルズを聞き続けたなどの話でした。
それからかなり前の回には、文化大革命中の中国の若者が、外国(台湾?香港?)のラジオから聞こえてきたテレサ・テンの歌声に衝撃を受けたという話もありました。戦闘的政治的な曲調の音楽しかラジオで聞いたことがなかった若者が、こんなにも優しく穏やかな音楽が世の中にあり得ると知り、自由へのあこがれが胸に灯るのです。
それから東ドイツの二ナ・ハーゲンの歌「カラーフィルムを忘れたのね」を扱った回もありました。東ドイツの人々の心に、白黒写真のような規制下の暮らしと、カラー写真のように鮮やかな自由な暮らしの対比を浮き彫りにし、ベルリンの壁崩壊のタイミングと重なっていくという話です。
どうやらたまたま聞いた音楽から隠されていた自由の全貌が一瞬で見えてしまうということがあるようですね。見えてしまったらそれはもう消すことができず、人々と社会を否応なく動かしてしまう。
音楽による瞬間的な根源情報の伝達、波及性、人を意図せずに動かす力、などなど興味深いテーマがたくさん潜んでいそうです。
そういえば以前に読んだ話で、北朝鮮旅行のバスの中で「翼をください」の歌を披露したところ、監視の役目も兼ねているであろう日本語通訳が何度もアンコールしてきて、繰り返し歌って聞かせたというのを読んだことがあります。このときもきっと、音楽から大きな情報が伝達されていたのでしょうね。