冒頭の写真は、ドイツ南部にある石器時代のホーレ・フェルス洞窟遺跡で発見された、ハゲワシの骨のフルート。5つの指穴と送風口にはV字の切れ込みを持ち、直径8ミリ、本来の長さは34センチほど、4万年前の現生人類最古の楽器と言われています。
ナショナルジオグラフィックの記事には、ヨーロッパに定住した初期の現生人類(ホモ・サピエンス)は文化レベルを向上させて生き残り、同じヨーロッパに分布していた近縁のネアンデルタール人(ホモ・ネアンデルターレンシス)は絶滅の道をたどったが、その差を生んだ文化の1つが音楽だったのかもしれない、と書かれています。https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/1358/
これに対して、スロヴェニアの遺跡で発見されたホラアナグマの骨で作られた笛が、6万年前にネアンデルタール人によって作られたものだという説があるのですが、指穴のように見える部分に人が作った形跡がなく動物の噛み痕とも考えられ、楽器とは考えにくいとするのが通説だそうです。
現在、ネアンデルタール人に楽器や音楽があった形跡は見つかっておらず、対して現生人類には音楽があった証拠があるため、音楽による集団の結束力の点で現生人類がネアンデルタール人より優位性を持っていたという仮説が出てくるわけですが、ネアンデルタール人に音楽がなかったという明確な証拠があるわけでもないので、この仮説は永遠に証明できない仮説なのかもしれません。
さて、笛であることが明らかな現生人類のフルートの方ですが、こちらには5つの指穴があるのでかなり高度な音階でメロディを作っていた可能性があり、現生人類は想像以上に豊かな音楽を奏でていた可能性がありそうです。