裾野の音楽と楽器たち

Tunaという音楽

Tunaという音楽分野があります。スペインやポルトガルのギター類を追いかけていると、マグロと翻訳されて何度も出てくるtunaというワードの意味が謎だったのですが、ようやく特定の音楽分野だとわかりました。スペイン、ポルトガル、その島しょ部(マデイラ島、カナリア諸島等)、中南米、さらにオランダ、ドイツ、アメリカ、フィリピンにも広がって、今や日本にもある、ギター型楽器を奏でながら合唱する形式の集団音楽です。ツナ、チューナ、ウナなど、国によって発音は様々です。伝統的な学生服を着て参加するのが特徴で、旗を持って踊る人が登場したりします。応援団的あるいはブラスバンド的というか、団結した祝祭的イメージの音楽です。

まずは雰囲気がわかるように動画をひとつ。こんな音楽です。これはスペインのバリャドリードのTunaです。

<概要>

・Tunaは、エストゥディアンティーナ(estudiantina)とか 、ロンダーラ( rondalla) とも呼ばれる。

・伝統的な学生服を着るが、演奏するのは学生に限らず、卒業生、一般人、アマチュアのほかプロミュージシャン、そして有名オーケストラもある。

・もとは男性中心だったが、1980年台以降、ようやく女性のtunaが一般に登場してくる。しかし伝統的なマッチョな男性tunaの抵抗あり。

・企業(靴屋、労働者、店員など)を代表するものから、地域的、政治的または宗教的アイデアを中心に形成することもあって、例えば、ポルトガルでは、共和党センター、フリーメーソンセンター、カトリックセンター内で作られたりしている

・起源については、英語、仏語、スペイン語のウイキペディアは、①中世に、修道院に下宿する伝統を利用して働かずに生活し、音楽、酒、料理、賭博、恋愛などの嗜好が目立つ遍歴聖職者(ジャイロヴァゴス、サラバイテス)、②14世紀ころ、サラマンカを中心とするスペインで、ソピスタ(スープの意味)と呼ばれる貧しい学生たちが、音楽の才能を生かして食べ物(スープなど)やお金を集めたり、歌で女性の気を引こうとしたりしたこと、③17世紀、パリの宮廷で乞食の頭が使っていたフランス語のroi de Thunes「チュネスの王」などに言及している。

・他方、ポルトガル語のウイキペディアは、上の①から③の起源を否定し、1830年代のスペインで、学生を模した服装でカーニバルを行うグループとして「エストゥディアンティーナス」の名で流行したことが起源であるとしている。根拠は、QVID TUNAE というポルトガル語の研究書らしい。

・tunaは世界的に旅する傾向が指摘されることが多い。19世紀以降、頻繁に国際交流、巡回公演などが行われ、歓迎され、広まった。

・tunaの音楽のレパートリーは、新作、よく知られたポピュラーな音楽、学生生活や愛の謳歌など多彩で、ユーモアと安っぽさが特徴の音楽スタイル、いわゆるピカレスクにテーマ的な親和性を持っている。恋愛、失恋、酒宴、夜行性、旅行、団員同士の兄弟愛などのテーマを多く扱っている。

・ポルトガル語のウイキペディアによれば、スペインからポルトガルに本格的にtunaが来て広まったのは1880年台かららしい。ポルトガル本土各地のみならず島しょ部にも広がり、1889年にはフンシャル(マデイラ島)のtuna・コンポステラができている。

・tunaの魅力として、兄弟愛、忠誠心、学生の伝統の擁護、青春の喜びを祝う、学生の気ままな精神、音楽と健康な楽しみを愛する、陽気で楽し気な姿勢といった価値が挙げられることが多い。

・tunaで使用される楽器は、ギター型の撥弦楽器各種(スパニッシュギター、パンドゥリアなど)、アコーディオン、フルート、軽いパーカッションなど。学生団体では、タンバリンは欠かせない。また、コントラバス、チャランゴ、ティンプレ、ベネズエラのクアトロ、マンドリン、バイオリン、ビウエラ、ギタロン、ポルトガルのカヴァキーニョなど各国それぞれのタイプのギター類が加わる。

以下は各国のtunaの動画。地域によって雰囲気が少しずつ違うようです。

ポルトガル リスボン 男女混合バージョン↓

ポルトガル ポルト 女子学生バージョン↓

メキシコバージョン↓

参考資料

ポルトガル語のウイキペディア

スペイン語のウイキペディア

フランス語のウイキペディア

tuna madrid

 

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