ウクレレ豆話

タロパッチウクレレ(Taropatch ukulele) 8弦ウクレレ

ハワイにおける最初のウクレレ製作者マヌエル・ヌネス(Manuel Nunes)は、4コース8弦の複弦ウクレレを製作しました。タロパッチウクレレ(Taropatch ukulele)と呼ばれます。タロパッチとはハワイの主要食糧だったタロイモの畑を意味する言葉です。ヌネスの後、マーチンやカマカからも順次タロパッチウクレレが発売されます。最近は日本では「8弦ウクレレ」の名前で数社から販売されているようですが、タロパッチの名前を避けているように見えるのは法的な権利関係の問題でしょうか。呼び方は違っても要するに複弦の8弦ウクレレですから、従前のタロパッチウクレレからの流れだと思います。

上の写真は1910年頃のマヌエル・ヌネスのタロパッチウクレレのヘッドです。8本の弦を2本ずつ4コースに分けていくわけですが、4コースの調弦は通常のウクレレと同じくGCEAです。現在販売されている8弦ウクレレ用の弦は、GとCをオクターブ、EとAをユニゾンで張る仕様で売っているようです。従来のタロパッチはオールユニゾンだったという情報があるのですが、最初のヌネスの時代どうだったのか調べた範囲では確認できませんでした。

マーチンのタロパッチの音の動画を見つけました。弦はワースの8弦用フロロカーボンセットだそうです。☟

この8弦のタロパッチウクレレは、ハワイでウクレレ開発初期に存在した5弦ギターからの発展形だと説明されることがあります。この5弦ギターのハワイでの呼び名もタロパッチだったことがハワイ州観光局のアロハプログラムのサイトに書いてあります。次の写真がそのハワイでの初期の5弦ギターで、ペグが5個あるのが確認できます。この写真では5弦ギターもウクレレの一種として扱っているようです。

この5弦ギターの起源は、ウクレレ渡来地であるポルトガル領マデイラ島の楽器Rajão(ラジャン)と見てよさそうに思います。次の写真がそのラジャンです。

まず目が行くイケメン男性の顔からギターヘッドに視線を移すと、ペグが5個ついていることがわかります。ラジャンは全部が単弦で調弦はDGCEAです。

5弦ギターが発展して8弦のタロパッチ(8弦ウクレレ)になったという話は、正直あまりなるほどという感じがしません。単弦と複弦の違い、4コースと5コースの違いなど、基本構成に共通性が見られません。タロパッチという呼び名の共通性から発展形のように言われるのでしょうか。調弦がGCEAを含むという点では、4弦8弦も含めてウクレレ全般への影響はあるかもしれません。ウクレレの起源と言われるブラギーニャの調弦はDGBDなので、このラジャンの下4弦の方が現在のウクレレの調弦に一致します。

複弦という点では、ラジャンよりもViola d’Arame(ヴイオラ・ダラメ、下の写真)からの発展という方がうなづけます。ヴイオラ・ダラメはポルトガル領マデイラ島古来のギターで、5コース9弦又は10弦の複弦ギターです。マデイラ島では庶民に広く使われていた楽器なので、ヌネスなどマデイラ島出身の製作者は当然知っていたと思われます。このヴイオラ・ダラメの複弦の響きをハワイに移植しようとしたのが8弦タロパッチで、それが現在の8弦ウクレレに繋がっているという流れは、ありそうな話に思います。ただしこのヴィオラ・ダラメはスチール弦なので、そこは8弦タロパッチ(8弦ウクレレ)と違うところです。ラジャンの影響とヴィオラ・ダラメの影響の複合という見方もできるかもしれません。

ラジャンとヴィオラ・ダラメの解説は、下のリンクからどうぞ。

ヴイオラ・ダラメ☟ 弦が一対多いですが、8弦ウクレレとよく似ています。

ラジャンについて

ヴィオラダラメについて

 

 

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