先日の岩田さんの古楽コンサートで隣の席になった人とジェイクシマブクロの超絶技巧ウクレレ演奏に話が及び、その時共感しながら出たのはこんな話でした。
ジェイクの演奏は、だれもができるわけではなく、選ばれた人だけができる特別な演奏で、いわば山の高みみたいな演奏。
一十舎が楽器作りを通して思っているのは、どんな人でもすぐに入っていけるような、山の裾野や平地みたいな演奏で、そんな普通の簡単な演奏に寄り添う楽譜と楽器があるとうれしい。ウクレレやバロック以前の古楽にはそんな雰囲気がある。
とまあこんな感じの話をしたのですが、山には必ず山頂があれば裾野があるわけですから、どちらか一択という問題ではないのですが、みんなの目が山の高みばかりに向きがちな現代では、裾野の方の豊かさを少し声を大きくして言ってみるのもわるいことではないでしょう。
ネット環境が整い、だれもが自分の好きなものを好きなままに気取らずに世界に向けて発信し受信できるようになった現在は、裾野のバリエーションの豊かさが、いきなり眼前に開けてくるような時代だと思います。簡単さ、普通さということの豊かさを堪能するのによい時代です。