昨日の続きのような話です。(^^♪
弦の種類を替えたらどのくらいウクレレのオクターブピッチが変わるのかの実験です。
様々な種類の弦について、開放弦で音合わせをしてから12フレットを押さえた音をチューナーで測り記録しました。使った弦の種類は、ワースのBM、ワースのBL、GHSの三種です。ワースはどちらもフロロカーボン弦で、GHSはナイロン弦です。12フレットの弦高はちょうど3ミリに設定の状況です。一十舎のソプラノウスレレを使用しました。
結果は次のとおりです。ちなみにセントという単位は、1オクターブが1200セント、半音が100セント、1/10音が20セントです。人の耳で聴き分けられるのは20セントあたりからと言われています。下の記載の意味は、A…+20セント というのは、12フレットを押さえたときに、20セント分本来のAの音より高めに計測されたということを現します。-20セントなら20セントだけ低く計測され、0ならほぼぴったりの音に計測されたという意味です。音は揺れるので、幅をもって、0~+5セントというような計測になっていることもあります。
(ワースBMの場合)
A…0~+5セント
E…-10セント
C…0
G…-20セント
(ワースBLの場合)
A…0
E…0
C…0
G…0
(GHSの場合)
A…+20
E…+5~+10
C…+20
G…-10~0
以上が実験結果でした。弦を替えると明らかに数値が変わります。こんなに変わりますので、オクターブピッチを測っただけで、これは名人の作だとかこれは駄作だとかいうことは言えないことがわかります。この実験に使ったウクレレは、GHSを張っていれば駄作、ワースのBLを張ってあれば名作、ワースのBMを張ってあれば微妙な作ということになってしまいますが、実態はダジャレ好きのおじさん作の同一の1本です。
ワースのBLが全部ぴったり0になったのは少しびっくりの偶然でした。でもこれでいいかというと、弦高をもう少し低くしたかったのでサドルの高さを0.6ミリほど削りました。そうすると全部の弦のオクターブピッチがー3セントくらいずれますので、それを補正する作業をしました。ですから、0に計測されればいいかというとそんなこともなくて、全体状況とのバランスで見ないといけないわけです。
ずれまくって計測されたGHSですが、これは全体に+方向にずれているので、弦高を下げることでずれ幅を少なくすることができます。各弦のずれ幅の数値をみると、サドルの天辺を前後どちらかに削ることによって、なんとか補正が可能な範囲におさまっているので問題なしです。
一番難しいのはワースのBMです。数値的には全体的にはまあまあの範囲に収まっているように見えますが、全体にマイナス方向にずれていることが問題です。特にGがー20であることが結構痛いです。マイナス方向に大きくずれていると、弦高を下げたときにこのずれが拡大してしまうので、弦高を下げづらいのです。結果として弦高3ミリのままで使うことになると、ワースのBMは少しテンションがある弦なので、ちょっと指がきつい使いづらさを感じるかもしれません。ウクレレでちょっと使いづらいという感覚は結構致命的になることがあります。そのウクレレはいずれ手にされなくなって埃をかぶる運命に直結するかもしれないからです。
実験結果はこんな感じでした。さて、ウクレレを出荷するときオクターブピッチをどうしたらいいかいつも葛藤があります。製作したウクレレにいちいち弦の張り替え実験をしたりはしないですから、張った弦について、おおむね使える範囲に収まる数値なら、そのまま補正なしで出荷するのがいいのでしょうね。お客様がなんの弦を将来使うようになるのかわかりませんから。もちろん弦高調整はします。弦高は弾きやすさのかなめのひとつなので。