ウクレレの魅力

ウクレレ無防備状態の人にウクレレの音を聞かせると…

ウクレレに関心もなく、ウクレレを直接見たこともなく、ウクレレを直接聴いたこともない人に、ウクレレと関係ない用事で出会うことが日常ではたくさんありますね。そんな人に、話の流れで、一十舎のウクレレを弾いて聞かせることがよくあります。ウクレレ作者というのは世間では珍しい存在ですから、そんな話の流れが生まれやすいわけです。

こんなウクレレになんの用意も備えもないようなウクレレ無防備状態の人に、突然一十舎のウクレレを弾いて聞かせるとどうなるかというと、結構強い反応が返ってきます。

うわあ、いい音! すごい安らぐ! いいなあ、欲しいなあ! ウクレレってこんなに気持ちいい音なんだ! うわあ! いくらなんですか? 高いけど買おうかなあ! 沁みるなあ!

みたいなちょっと突き抜けた反応がわりと共通に返ってきて、実際に購入してくださることも珍しくありません。

たまたまお隣を訪ねてきた赤ちゃん連れのおかあさんとか、建物の修理をしに来た工事関係のおじさんとか、処分する原付を査定に来た若いお父さんとか、友人の不動産事務所を訪ねてきて友人が持っている一十舎のウクレレの音をたまたま聞いた人とか、そんな人たちです。

このウクレレに無防備な状態の人に聞かせる小さな優しい音が、ほとんど雷級のインパクトをもって心の中に鳴り響き、一瞬に深層に刻まれるようなところに、ウクレレの音の秘密がある気がします。それは物理的な鳴りの大きさや演奏技巧とは別次元の鳴り方です。小さな音、穏やかな音、やさしい音、しずかな音、シンプルで簡単な音、そういうものが持つ巨大な深い力、それがウクレレという小さな楽器の魅力のひとつだと思います。

そんな音を求めた結果、一十舎のウクレレは、だんだんウスレレになりました。シンプルな古楽器の時代に自然に近づいてきているのも感じます。