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馬の頭の呪術芸能 ジャワのジャティラン(JATHILAN) & 日本の春駒  

養蚕の予祝を行う春駒は、馬の頭の作り物に跨ったり、手に持ったり、頭に載せたりしながら踊るのですが、馬の頭を使う理由はよくわかっていません。

そこで世界に同様の馬型を使う踊りはないか探していて見つけたのが、ジャワ島(インドネシア)のジャティラン。

春駒は、養蚕の作業工程を再現して唄い踊ることで養蚕の成功を予め祝うという呪術的な芸能なのですが、ジャワのジャティランもまた強烈に呪術的です。村の結婚式や割礼式などにおいて、竹で編んだ馬の作り物に村の青年たちがまたがり、ガムラン音楽に合わせて踊るうちに青年たちが次々に祖霊や森の動物霊、精霊などに憑依されていきます。ガムラン音楽はどんどんリズムが激しくなり、やがて倒れてのたうつ者、白目をむく者、ヤシの実を頭に打ち付ける者など、混沌とした状態になります。そんな中、パワンと呼ばれるシャーマンたちがトランスの青年たち一人ずつをお祓いしていきます。

実際のジャティランの様子はこちら。↓

何だかそら恐ろしい感じですが、村人たちは見慣れているのか、平気な様子です。

この動画の中には、日本の獅子舞とそっくりなものも登場し、そんなところも興味が惹かれます。インドネシアには、インド支配時代のヒンズー教、アラブ支配時代のイスラム教、ポルトガルさらにはオランダ支配時代のキリスト教、さらに中国文化の流入などがあり、それら多様な文化と信仰が古い土俗的精霊祖霊信仰の中に溶け込んでいるので、いわば文化のチャンプルー状態。春駒や獅子舞なども、大陸経由あるいは海洋経由で、東アジアという大鍋の中でチャンプルー的に混交して何らかの繋がりがあるのかもしれません。

日本の春駒の説明としては、柳田邦夫の祖霊神の思想とか、折口信夫のまれ人の思想とか、邪悪な霊から土地を守るとか、類感呪術とか、さまざまな説明があるのですが、このジャワのジャティランにも当てはまるところが多々ありそうで、春駒の理解の参考になります。ちなみに以前に書いた春駒の呪術面について書いた文章はこちらです。https://ittosya.net/harukoma5

トランス現象と馬の頭の関係はよくわかりませんが、ガムラン音楽が精神状態にかなり作用しているのは多分まちがいなさそうで、ガムラン音楽にも興味が尽きません。

参考・インドネシア芸能への招待 皆川厚一著