昨日のつづき。
上の図は、人の可聴域周波数と各種楽器が出すことができる周波数成分との関係図。
この図で目をひくのは、歴史的に古い楽器や音楽は超高周波を出しているのに、ピアノやオーケストラと言った現代も広く使われているものは超高周波を出していないということ。現代のものはみごとなまでに人の可聴域ぴったりに収まるように調整されているようにも見えます。
これは数人から多くても数十人規模の少人数で聴くものであった音楽が、大ホールで数百人から数千人規模で聴くようになり、楽器の大音量化が重視されていく中、楽器が余計なものを削って合理化して行く過程で、超高周波が生まれる仕組みが消えていったということだったのでしょうか。また、可聴域を超える超高周波は耳からでなく体表面で感知すると言われていますから、それは体を寄せ合う小さくて密な空間を必要とし、超高周波は大ホールなどではもはや不要な音になってしまったという可能性もありそうです。
ちなみにピアノと尺八の音のスペクトルの違いを可視化したのが下図。ピアノは、びっくりするくらいきれいに可聴域の20kHzを超える部分がカットされています。まるで20kHz以上をカットして製作したCDのデジタル処理みたいです。尺八はたくさんのゆらぎを含みながら広い周波数をカバーして、自然の地形のような形です。
冒頭の図に出てくるチェンバロ、ガムラン、バグパイプ以外で超高周波を出すものとしては、尺八、琵琶、能管、地歌、ブルガリアやジョージアの合唱、ピグミーのコーラス、ホーミー、鈴、木魚、タンバリンやマラカスなどの名前が、各種資料に見られます。
ギター形の撥弦楽器の周波数について分析や言及した資料が見当たらないので、超高周波をどのくらい出すのかかよくわからないですが、弦を突起ではじいて音を出すチェンバロが超高周波を出すことからすると、ギター類も超高周波を出す可能性はありそうです。特に、私が製作しているルネサンスギターやビウエラなどの複弦構造は、超高周波を生み出す仕組みである可能性があるのではないかと個人的に推測しています。そう考えれば、複弦ギターがバロック時代まで続いたのが、19世紀から急速に単弦化していった理由も、チェンバロとピアノの推移と同じ歴史の流れとして説明できるように思います。
参考 大橋力著 ハイパーソニック・エフェクト 岩波書店
file:///C:/Users/user/Downloads/StudiesInHumanSciences_10_35.pdf
https://nlp.officialblog.jp/archives/51018534.html
https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/15/071300026/071800541/?P=2