ウクレレ豆話

ヴァイオリンとウクレレの振動システム 丸孔とf孔

ウクレレのサウンドホールは丸い孔がひとつ。

これに対して、ヴァイオリンのサウンドホールは、細長いf字孔がふたつ。

なんでか? というのがここでの問題意識。

サウンドホールの役割は、箱の中で鳴った音を外へ出すだけではなく、表板の振動を受けて楽器内部の空気がバネのようにサウンドホールから出入りするという、胴体と内部空気で構成されるひとつの振動系を形成することにあります。(この低い周波数で起きる代表的な共鳴がヘルムホルツ共鳴)

ではまずヴァイオリンを見ていきましょう。

ヴァイオリンの振動系は次のような要素でシステムが構築されています。

・アーチトップの表板。これによって、板の面に沿った伸び縮みを伴う複雑な振動が生まれ、アーチ形状のわずかな変化でも固有振動数や振動パターンを変化させることができる。アーチ形状は薄い板でも剛性を高める効果もあり、その分板を薄くすることができるので、その点でも振動しやすい構造が作りやすくなる。

・ブリッジの左右にf字孔を作ることで、ブリッジ付近がひとつの独立した島のような領域となり、この部分が動きやすい構造になる。

・サウンドホールを通る空気は、特に孔の縁に近いところで大きく動くため、孔の周長が長い方が音響放射効率が高くなるが、f字孔は、孔の面積に比して非常に長い周長を確保することができるため、小さな開口面積でも効率よく空気を動かすことができる。また、板面に大きな孔をあけてしまうと板の強度が落ちるが、f字孔は孔の面積を増やすことなく周長を長くすることができる。

・このf字孔のアイランドにブリッジを立てるが、ブリッジの片方の足の下にはバスバーが通り、もう片方の足の下には魂柱があって表板と裏板を繋いでいる。この非対称な構造を通して、アーチした表板、裏板、側板、そして胴内部の空気へと効率的に振動が伝わっていく。

次にウクレレ。

ウクレレの振動システムはヴァイオリンとは大きく異なります。

・表板はアーチしておらず、基本的に平らで、ブリッジは二本の足で立っているのではなく、横長のブリッジが表板に直接接着されている。これにより、振動は表板全体に広く伝えることで大きな効果を生む構造になっている。

・表板の中央付近に丸いサウンドホールを一つ開けることで、表板の構造をあまり複雑にせず、胴内部の空気を外部と結びつける。

・丸い孔は、同じ面積なら周長がもっとも短い形だが、ウクレレは、小さな胴、小さな表板、軽いブリッジ、低い弦張力という条件の中で、表板をできるだけ素直に振動させながら、内部の空気との共鳴を作ろうという発想でシステムが作られている。その場合、中央に単純な丸孔を置く構造が使いやすく、強度的にも音響的にも合理的になる。

以上がヴァイオリンとウクレレの音響システムの概観なのですが、そんなわけで、片方はf字孔、片方は丸孔ということになっています。

これは、どちらの良し悪しという問題ではなく、様々な要素の相関関係の中でバランスを探求した結果生まれた異なるシステムと言えます。

最後に、表紙絵は、ミカンを上から筋状に剥くと、自然にf字孔と同じ形になるという話で、ミカンのような球面を筋状に剥いて平面に置くと、偶然にもf字孔を思わせる形になるところにも、f字孔の面白さを感じます。

 

RELATED POST