ビウエラ

ビウエラ・ルネサンスギターとアラブ音楽の関係のこと

ビウエラとルネサンスギターは、アラブ音楽と関係があるのか、それともないのか? ということなんですが…

15世紀末にレコンキスタが完了してスペインからイスラム王朝が追い出されますと、それまでのアラブ的な楽器と交替するようにビウエラやルネサンスギターが16世紀スペインに広がることになります。

こういうイスラム排除という経緯や理念から見ると、ビウエラやルネサンスギターは、アラブ音楽とは全然関係ないものとして登場したということが強調されることになります。アラブ音楽との差別化にこれらの楽器の本質があると言う見方です。

しかし視点をレコンキスタという定点から引き離してもっと長いスパンで眺めてみると、イベリア半島に後ウマイヤ朝のイスラム政権が起こったのが8世紀で、9世紀始めにはもうズィルヤーブを始祖とするアラブ・アンダルシア音楽が始まっていきますから、アラブ音楽は1200年以上の長きに渡ってスペインの人々の暮らしとともにあったわけです。アラブ音楽の感性は、スペインに住む人々の血肉のレベルになっていたはずで、その文化的影響がそう簡単に洗い流されてしまうとは考えられません。

また、アラブ音楽との差別化ということを強く意識すればするほど、裏側からアラブ音楽の影響を強く受けてしまうという側面もあります。

スペイン的な音楽の底深くには、アラブ的なリズムと旋律が今なお強く残っているのではないでしょうか。

ビウエラやルネサンスギターも、アラブ的なものからの断絶という方向より、アラブとヨーロッパの相互影響という方向で見ていくことで、より鮮明な像を結びそうだと思います。

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