ルネサンスギターとウクレレの両方に関係がある音楽として、インドネシアのクロンチョンという大衆音楽があります。ポルトガル船が16世紀にインドネシアにやってきたときまで起源がさかのぼりますが、様々な要素を取り込んで現代大衆音楽に進化しています。
まずは日本でもわりと知られているクロンチョンの曲、ブンガワンソロをお聞きください。
メロディは日本人にも親しみやすいなつかしさです。伴奏のリズムが独特でおもしろいですね。クロンチョンはあくまで歌がメインの音楽ですが、歌を支える伴奏楽器の使い方に特徴があります。
現代のクロンチョンの伴奏は7種の楽器構成で、フルート、ヴァイオリン、チェロ、ギター、ベース、チャック(チャッ)とチュック(チュッ=クロンチョンギター)が使われます。打楽器は使用されず、弦楽器だけでリズムを作るのが特徴です。
チュックとチャックの二種の小型ギターがポイントで、チュックがナイロン弦でポコンポコンと鳴って一拍目(オンビート)を打ち、スチール弦で高音(チュックより5度高い)のチャックが二拍目(オフビート)を打ち、この二つの小型ギターのコントラストが、クロンチョン独特のビートを作ります。このビートの間にスチール弦のメロディギターの大きく上下するアルペジオが入ります。ダブルベースがボーンボーンと底を打ち、チェロのピッツィカートのシンコペーションがチュックとチャックのリズムに変化を与えます。このように5本の弦楽器がうねるようなリズムを作るのです。
この弦楽器のリズムをバックにして、フルートとヴァイオリンがイントロと間奏、そしてメインの歌の対位的なメロディを奏でます。
そして最後に歌。まろやかで甘い歌声がこれらの伴奏に乗ります。
こんなのがクロンチョンの音楽です。私はこの伴奏の方に耳を傾けていると、波に揺られているような感覚になり、だんだんくせになってくるのです。
今日の最後にインドネシアの風物の映像とともに、プロが歌うブンガワンソロ。クロンチョンは、インドネシアのポピュラー音楽として、こういうプロの歌唱がたくさんある分野で、どこか日本の昭和の歌謡曲の世界の雰囲気に似ている気がするのです。
明日につづく
参考・インドネシア音楽の本 田中勝則著 Wikipedia ほか