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木工談義15 螺鈿・象嵌 弱い光で輝く

知人の木工家と話していたとき、貝を貼ったり埋め込んだりした螺鈿・象嵌の装飾の話が出ました。貝素材は、現代の照明器具がなかった時代には、今よりもっと美しかったという話です。月光やろうそくや暖炉などの微弱な光に輝くそれは、怪しいほどに美しく、しかし現代は微弱な光がないのでその輝きはもう見られない、というのです。

言われてみれば、微弱な光に輝く貝の美しさがありありと目に浮かびます。ぞくぞくするような美しさです。あこがれの彼女と夜の散歩に出て、濡れた瞳の輝きにドキドキした…なんて場面もそうですが、弱い光の反射は、とても魅力的です。弱い光に、ある意味とても強い光を感じます。

一十舎のウクレレでは貝を使用せす、埋め込みには木を使っています。かえで、かりん、くるみ、パロサント、さくら、ローズウッド、などなど、様々な色合いを楽しんでいます。

木の中に木を埋め込むと、柔らかさや温かさという種類の光が出るような気がします。こちらも強い光ではありませんが、寛ぎの感覚、楽しんでいる感覚なども出るような気がします。月光の中の螺鈿のような怪しさとは異なりますが、色の取り合わせによっては、木が光って見えることもあります。黒い背景に黄色い漆の木を入れると、ほとんどそれは金色です。パロサントの緑や、花梨の赤などは、宝石の輝きのように見えたりします。

どうして弱い光が魅力的なのでしょう。
光が弱い分、光を感じ取ろうとして、光を感じ取る感性の方が開かれるのかもしれません。
ネコの目は、微弱な光の中では瞳孔が大きく開きますが、人の感性もまた微弱な光の中で大きく開かれていて、そのようなタイミングできらりと光るものを見ると、瞬間的に強い光を受け取ることになるのではないでしょうか。

物作りをして美しさを提示しようとする者としては、美しいものを作ると同時に、受け手の感性を開く舞台装置を作っておくことも、結構大事なポイントのような気がします。(^^)

 

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