瞽女さんの音楽が、「縁起が良い」とか「おめでたい」と歓迎されたのは、なんでだろう、なんでだろう、いったいなんでだろう~♪ というわけで縁起の良さに関係しそうなポイントを抜き出してみますと、
① お祝い系の持ち歌と地域産業のマッチングがうまくできている
② 瞽女さんの来歴に宗教性の物語がある(※瞽女縁起)
③ 社会的弱者の瞽女さんを村のみんなで助けているという地域連帯感があり、また善行に対する御利益の感覚がある
④ 目が見えない人に対する、特別感・神聖感がある(②の瞽女縁起の話にも繋がる)
⑤ 季節性の来訪に春の訪れを待つような明るい期待感がある
⓺ ある日突然やってくることに、サプライズプレゼントのようなご褒美感がある
⑦ 瞽女さんが来た夜は仕事の手を休めて遅くまで音曲を楽しんでよいという解放感がある
⑧ 泣き笑い全部入りのレパートリーのカタルシス、ヒーリング、癒しの感覚がある
⑨ 弦を勢いよくたたく三味線の音の明るさに、祓い清め的な感覚がある
⑩ 門を一軒ずつ叩いて回ってくることに神仏の来訪的な感覚がある
⑪ 来訪に米や金銭をさし出す行為に、神仏へのお供えやお賽銭に近い感覚がある
⑫ 流行や新情報を運んできてくれる人という新鮮な感覚がある
⑬ いつも変わらぬ唄と音楽を運んでくる人という安心感がある
まだほかにもありそうですが、このような複数の感覚が溶け合って、「縁起の良い感じ」が醸成されてきて、瞽女さんとその音楽をおめでたい色彩に染め上げているのかなと思います。
このようなポイントをうまく現代風にアレンジしていくことで、新しいおめでたい音楽の再創造も可能かもしれません。昔の芸の保存のほかにも、伝統のエッセンスを取り込んだ現代的な再創造も、大きな意味で伝統の再興なのではないかと思います。
※ 瞽女縁起…瞽女仲間の中心思想の聖典とも言うべき「瞽女縁起」によれば、瞽女は「嵯峨天皇第四の宮女である相模の姫君」を元祖とし、姫君が7歳の時に「紀伊国那智山如意輪観世音菩薩」が枕の傍らにあらわれ「末世の女人盲人の師となる」というお告げを受け、やがて姫は優れた音楽的才能で音曲を身に付け、その門下が五派の瞽女の祖師になったという。また如意輪観世音菩薩は妙音菩薩で、妙音弁才天加茂明神を常々祈るべし、という。この瞽女縁起に基づいて、瞽女たちは守り神である弁財天を祀る「妙音講」の催しを毎年開いて唄を奉納し、講には近隣の者も訪れて、例えば長岡の講では露天商が立ち並んだという。(冒頭写真は妙音講のもの) 瞽女縁起の内容の参考資料は、「瞽女うた ジェラルド・グローマー著」より。