昨日は南イタリアのギター、チタラ・バッテンテのことを書きましたが、はるか遠くブラジルにも、スチール弦の複弦5コースという同じ構成のギターがあります。名前は、ビオラ・カイピラ。ビオラ・セルネタハ(viola sertaneja)とかビオラ・カボクラ(viola cabocla)などの名前のこともあり、ブラジルの地域ごとに様々な名前の近縁楽器があります。
起源的には、ポルトガルのビオラからの流れと言われています。イタリアのチタラ・バッテンテがルネサンスギターやバロックギターからの流れでしたが、異なる起源からの流れなのに同じような構成にたどりついたり、かと思うと、ひとつの楽器が地域こどに短期間でおよそ同一と思えない変化を遂げたりするというのが、楽器の展開のおもしろいところです。
ビオラ・カイピラは、ブラジルではよく知られた楽器で、現代ではブラジルのカウボーイスタイルのカントリーミュージックを代表する楽器です(ブラジルは牛肉生産量世界二位でカウボーイがいっぱいいる)。カウボーイハットにカウボーイブーツの姿で、クールな演奏技巧を見せる動画がいっぱいあります。
ブラジルのビオラの伝統はかなり古く、ポルトガルのビオラが持ち込まれてイエズス会の宣教師が現地民に対する宗教教育(カテキズム)に使用し、やがてビオラが土着化して、白人、クレオール(アメリカ大陸生まれの黒人)、カボクロ(インディオと白人の混血)、カフーゾ(インディオと黒人の混血)など、様々な人種に利用されました。ビオラ・カイピラの音楽には、多様な人種の文化が流入しているわけで、ビオラ・カイピラの調弦の方法も数十もあります。
ビオラ・カイピラのゴスペル↓
このブラジルのビオラ・カイピラ、昨日紹介した南イタリアのチタラ・バッテンテなど、歴史的に世界的にギターという楽器はこんなにも多様に展開していたのかと驚かされます。
はやりの型番のギターにみんなあこがれるみたいな同じ方向を向きがちな音楽世界の背景には、非常に多様に展開する音楽世界があることに、とてもわくわくするのです。