家具でも食器でも、物体の表面をコンコン叩くと特定の高さの音が出ます。これはその物体が材質や形状で決まる特定の振動数で振動するからです。この物体が持つ自然な振動数が固有振動数(単位はHz)で、その物体が一番共振しやすい振動数です。例えば上の絵のように、固有振動数2.44Hzの建物に2.44Hzの地震波が加わると共振して大きく揺れることになります。
ウクレレやギターの表面をあちこち叩いてみると、場所によって結構色んな高さの音が出て、各部位に様々な固有振動数があることがわかります。それらが総合的に各音階の周波数とバランスよくマッチしてくれれば、気持ちよく鳴る楽器ができあがるはずです。
では固有振動数は何によって決まってくるかというと、物体の剛性、質量、形状や構造、支持条件、材料の弾性率などが、物体の固有振動数に影響する条件にあたります。例えば、質量が小さくなったり、剛性が高くなったりすると、固有振動数は上昇します。
どうやら、使用する木の種類、材の厚み、ボディ形状、力木の太さや配置など、ギター製作者が工夫を凝らすポイントは、そのまま固有振動数を変化させる条件と重なると言ってよさそうです。
楽器がよく振動するためにこれらのポイントについて製作者は工夫をこらしてきたわけですが、単に振動すればいいというわけではなく、各音階の周波数と楽器の持つ複数の固有振動数がバランスよく重なることがより重要なのだろうと思います。特定の周波数だけが強く(あるいは弱く)共振するのでは、いかに大きな音が出ようとも、全体として心地よい響きにはなりません。巨匠と呼ばれる人は、これらのバランスを供えた楽器を作るコツを発見してしまった人なのでしょう。