長い歴史を持つ楽器や音楽は、伝統派と現代派の2方向の分類があることが多いように思います。洋の東西を問わず、あらゆるジャンルにそういう区分けがあって、対立したり、協力したり、反発したり、あこがれたり、微妙なバランスで連動しているように見えます。
この2方向の特徴をあげると、ざっとこんな感じでしょうか。
【伝統派方向】
・過去に理想形
・伝統の承継に価値がある
・伝統を承継するための組織や流派があり、教育体系がある
・組織内経済の規模大
・教師側に教授内容の決定権がある
・正しい音楽という観念
・変化に消極
・様式性
・知識や技術の正確さを重視
・聖なる音楽の感覚
・閉鎖的(秘伝は容易に明かさない、長い修行が必要、選ばれた者だけが習得できる)
・伝授において徒弟的な支配服従関係を求められることがある
【現代派方向】
・理想は現在(楽しめる、人気、喝采、売れる)
・承継より創造
・流派や組織は絶対でなく、複数かけ持ちも移動も自由
・組織外経済の規模大(マスメディア等)
・多様な教え方や学び方の中、どう学ぶかは生徒に選択権
・楽しい音楽という観念
・変化に積極
・非様式性
・論理より感覚
・気取らないノリの良さ
・開放的(秘伝はない、演奏に資格はいらない、才能とやる気しだい、下手でもいいさ)
・教師と生徒に上下がない
ざっとこんな特徴が思い浮かびます。もちろんこれは傾向性にすぎず、現実には様々な濃淡があるはずです。
さて、ここで私の脳裏をよぎるのは、力の分解(合成)の図形。
音楽という中央のひとつの力は、二方向の音楽に必ず分解されるのが宿命なのかも…? そして、人それぞれ、分解線に挟まれた面のどこかにポイントされて、さらに落ち着く位置を探して移動しながら音楽活動をしているような気がします。
最終的には、分解されたふたつの矢印を再合成し、真ん中の一本の音楽の矢印に人は戻っていくのでしょうか。