現代の感覚でも楽しめる三味線と歌と踊りの芸をいくつか。
まずは俗曲師の檜山うめ吉さん。うめ繋がりなのか、聞いてふと思い出したのが、梅みそをかけた刺身こんにゃくの甘酸っぱくてさっぱりしとした味。
次は三味線漫談の三遊亭小円歌さん(現在は立花家橘之助さん)。こちらを料理にすれば、キュウリとミョウガの浅漬けか(あくまで私見です)。小気味よくキレがあるすっきりとした味。
次は女道楽の内海英華さん。こちらも私見ですが、出汁がきいた茶碗蒸しか。うまみの中の三つ葉と銀杏の味がくっきり。
というわけで、演者それぞれに個性豊かです。
動画の中で、三遊亭小円歌さんは、この芸をしているのは日本に二人だけで、すなわち世界にたった二人の芸とおっしゃり、内海英華さんも、この芸は大阪にたった一人、すなわち日本一にして世界一の芸とおっしゃり、加えて、かつては大勢いた先輩方が今はもういなくなってしまいましたと現状を語っています。
ひとつの芸が日本から消えそうだというのは一大事。芸がひとつ消えるというのは、日本の損失で、それはつまり世界の損失。ひとつの文化が一度消えたら取り返しが付きません。
現代人の感性に合わなくなった音楽がすたれるのは時の流れてとしてやむをえないという見方はもちろんあるでしょうが、明治以来の民間芸能弾圧がなかったとしたら、三味線を弾きながら歌うことが今なお最先端流行という時系列だってあり得るわけで、その可能性が思い浮かばないのは、きっと三味線が中央から排除された中で形成された歴史観の中に思考が閉じ込められているからでしょう。
日本人がわずか百年前に当たり前のように持っていた、三味線を聞いて弾いて歌って楽しむという感性を普通に取り戻すと、日本はひとつ豊かさを取り戻し、それはつまり世界がひとつ豊かになるということではないでしょうか。