15世紀、大航海時代に入る前のポルトガルは、アフリカ大陸を少しずつ南下していきますが、その過程でポルトガル人とアフリカ人の初めての出会いが起こります。
1455年と1456年にアフリカ西岸をたどったアルヴィーゼ・ダ・カダモストの記録には、初めて笛を見たアサナギ族の反応について、このように書かれています。(カダモストの航海の記録 大航海時代叢書 岩波書店)
「ヨーロッパ人が笛を演奏すると音の美しさに仰天し、笛を生き物と考えた。説明され、さらに手で触ってようやく道具とわかるのだが、決して人間の作ったものとは考えず、『これほど美しい、様々な音色を出すものが神の作ったものでないはずがない』と感想をもらした」
楽器という存在を見たことも聞いたこともない人たちが初めて楽器に接するとこのような反応になるのですね。アフリカ人ですから太鼓は知っていたかもしれないし、狩りに弓を使っていたとすれば弓のつるをはじく音も知っていたかもしれない。でも笛の音となると身近な類似の音は風が森に響く音や、動物が出す声しかなく、それはまさにアニミズム的な神霊の音として感じられたのかもしれません。
それから、ポルトガル人が長い冒険の航海に楽器を持参していた事実にも興味を引かれます。簡単に携帯できる小型の楽器の筆頭は笛ですが、小型の弦楽器がどのくらい航海に持っていかれたのかにとても興味があります。