さてさて、ヤマハの新発売ウクレレ、STコンサートについて書くのも本日で三回目。別に宣伝してるわけじゃないんですけどね。一十舎で販売してるわけでもないですから宣伝する理由はないんです。
でも書きながら実感するのは、他社製品を考えるというのは、実に勉強になるなあということ。自分になかった発想が見えたり、自分の発想が整理されたり、新たな気づきがあり、新たな知識があり、ウクレレ作りが深化する感じでいいですね。天下のヤマハ様を利用して楽しませていただいています。ありがとうございます。(^^)/
さて、今日は、7番目の話ですね。
7 サウンドホールの位置
いきなり写真を並べましたが、今日はサウンドホールの穴の位置のお話です。
三角おにぎりボディがヤマハSTコンサート、ひょうたんボディが一十舎で試作中のウクレレです。ウクレレを知らない人が見たら同じ種類の楽器とは思わないくらいちがいますね。( ゚Д゚)
穴の位置を比較していただくと、ボディ全長の中で、おにぎり型は上の方に張り付くような位置に穴があり、ひょうたん型はボディ中央の方に穴があります。おにぎりの方はボディ全長の下から四分の三あたり、ひょうたんの方はボディ全長の下から三分の二あたりに穴があるという感じでしょうか。
STコンサートほど上の方に穴が開けてあるウクレレは見たことがありません。かなり特徴的です。ネックとの接合の都合やボディの強度などを考えると、上寄りの限界ぎりぎりまで上げているように思えます。これに対してひょうたん型のウクレレの穴の位置は、ウクレレとしてはごく標準的なものと思っていただいて結構です。
ボディの中で共鳴する音を外に取り出すためには、どこに穴を開けるのが効率的か、という話なんです。普通に考えたら、ボディの真ん中あたりかなと思わないでしょうか。ボディの中で音波が反射を繰り返して往来しているわけですから、その波の行き来の真ん中に穴があれば、一番たくさんの音波を取り出せるような気がしないでしょうか。
私も漠然とそんな感覚の中で、ウクレレの伝統的な穴の位置にしたがって穴を開けていたのですが、STコンサートの穴の位置はかなり意図的に上端にずらしてあるようです。
そこで、この写真をごらんください。
琵琶とマンドリンです。どちらも穴の位置が上寄りです。ボディの形状はSTコンサートのおにぎり型に似て水のしずくの形です。上に向かって細くなっていくという点が同じです。どうやら上に向かって細くなっていくボディ形状の場合は、穴をボディの上側に開けるというのは普通のことなのかもしれません。
なぜかなと考えたんですが、大事なのはボディ全長のどこに穴を開けるかではなく、むしろ横幅との関係じゃないかということに気が付いたんです。横幅との関係で見ると、おにぎり型にしても、しずく型にしても、ひょうたん型にしても、全部横幅が狭くなるところ、一番細くなるところをめがけて穴を開けているように見えるんです。
そういう目で見直してみると、バイオリンもそうだし、馬頭琴もそうです。こちらは丸穴ではなくf字孔ですが、やはり細い方に穴を開けています。
そこで私の仮説なんですが、音波の動きを水の波の動きに置き換えて考えると、幅の狭いところでは圧力が高まるんじゃないかと思うんです。川でも急に狭くなるところは激流になります。海の津波などでは、狭い海峡や狭い入江では波が一気に集中して海水面が急上昇して押し寄せたのは記憶に新しいところです。音波でもそういうことが起きてる可能性があると思うんです。
電気は電子の流れの波ですが、同じことは、抵抗値が高くなるとそれに比例して電圧が高くなるという公式(V=IRという計算式)で表現されます。波というものは、通りにくくなる状況を作ると、その通りにくさに比例して圧力が高くなる関係にあるのではないでしょうか。
そういう理屈で、楽器のボディの狭い部分では音圧が高くなるので、そこに穴を開ければ音波が圧に押されて自動的に外に飛び出してくることが経験的にわかっていて、伝統的な楽器はみんなその細いところに穴を開けているように思えます。
このように考えると、ひょうたん型ボディの理由もわかる気がします。高圧の音波を作ってそこで音を効率的に取り出すために意図的に細い部分を作っているのかもしれません。
そして三角形おにぎり型のウクレレは、一番高圧の音波になるのはおにぎりの頂点のところです。STコンサートの穴の位置がこんなに上寄りにあるのも合理的なことのように思えるわけですね。(^.^)
では本日はこのへんで。
(^^)/