オクターブチューニングという言葉があります。オクターブ調整とかオクターブピッチとかも言います。
ギターでもウクレレでも、オクターブチューニングが大事と言われています。エレキギターでは最初からオクターブチューニングのための調整ねじが付いていますし、ウクレレではそういう調整ねじはないのでサドルの前後を削って弦があたる位置をずらしてみたりします。
オクターブチューニングとは、解放弦の音と比べて12フレットの音が正確に1オクターブ上の音になるように調整しましょうということなんですが、どうしてこれがそんなに大事なんでしょう。
それはたぶん、音のものさしをそろえましょうということだと思うんです。
みんなが微妙にちがう長さの1メートルものさしを使って家を建てたら、まともな家は建たないですね。同じように、12フレットで完成するオクターブを一致させるということが、音の共通ものさしとして、みんなで音楽を作る基礎になってると思うんです。そこが一致しなければ音楽という構造物が立たなくなる、だからオクターブチューニングが大切なんだと思うんです。
19世紀以降現代までの音楽は、12平均律というものを使っているわけですが、これはまさに12個の音を平均化した並べることによって、統一ものさしを作ったと言えるんですね。これによって、機械的に転調したり、たくさんのコードが開発されるようになりました。近現代音楽はものさしができて一気に汎用性を獲得し、音楽の自由な展開が始まりました。バッハなんか、平均律で遊びまくってますね。クラシックも、フォークも、ジャズも、ロックも、みんな12平均律という共通ものさしができたからこそ生まれることができました。親にはとりあえず反抗してみせるロッカーの若者でさえ12平均律だけには反抗しないですからね。音楽の母、音楽の父なんですね。
それ以前の純正律というものでは、こういう広がりができなかったんです。音と音のハーモニーの概念はあっても、それはその曲限りのものになっていました。それが12平均律が作られることによって、音に統一のものさしができて、転調したり、他の楽器と合わせたりということがどんどん自由にできるようになりました。
すごいですね。
でも実は、完璧なハーモニーという意味では、純正律の方が完璧と言われています。汎用性はなくてもその場に成立したハーモニーは極めて美しいのが純正律です。神の音楽とも言われたりします。それに対して平均律は、音の平均化の中で完璧なハーモニーとのずれを少しずつ平均に各音に割り振ることをしていまして、微妙なずれが各音の中に内在しているんです。でも、12フレットの1オクターブの位置では完璧にものさしが一致するわけです。それが12平均律の肝で、そこから平均化をして音を割り振ることで、みんなが同じ音を持てるようになっているわけです。
というわけで、オクターブチューニングというのは、ほかは譲れてもそこだけは譲れないみたいなところがあって、12平均律音楽の基礎作業みたいな感じがあるわけです。
さて、今日は工房改装作業の5回目に行ってきますよ。そこで使う共通ものさしはもちろんメートル法です。一緒に作業する建築士の友人は、時々、尺というものさしを持ち出すんですけどね。☺
では、チャオ!(^^)!