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チェリーニのヴァイオリン 「呪われたヴァイオリン」とは?

弾く者が不幸に見舞われる呪われたヴァイオリンと言われるのがチェリーニのヴァイオリン。今もノルウェーの博物館に現存しています(上の写真)。

このヴァイオリンは、アルドブランディーニ枢機卿(1536-1605、後のローマ教皇クレメ ンス8世)による「装飾入りの最高のヴァイオリンを作ってほしい」という依頼により、ガスパロ・デ・ベルトロッティが楽器本体を製作し、渦巻や指板など装飾部分を当時最高の装飾家であったベンヴェヌート・チェリーニ(1500-1571)が担当して作られた、当時最高に華麗なヴァイオリンでした。楽器本体の製作者の名前でなく、装飾家チェリーニの名前で呼ばれるところに、このヴァイオリンの豪華さがうかがえます。

このチェリーニのヴァイオリンは、枢機卿が恋心を抱いていたとある少女に贈られて少女が弾いていましたが、やがて少女は原因不明の死を迎えます。以後数百年、このヴァイオリンの演奏者や所有者は狂気、貧困、原因不明の死などの不幸に見舞われ続けます。その詳細は、次のHPに詳しくまとめられています。

http://www.tuhan-shop.net/the%20orchestra/gakki/m1-3-tyerini.html

このような「呪いの〇〇」という話は、楽器のほかにもいろいろ見つかります。

例えば、日本の戦国時代、当時最高の刀工と言われた村正が製作した日本刀。村正は最高の切れ味の刀として武将に愛されましたが、やがて村正は徳川将軍家にわざわいをもたらす刀として妖刀と言われるようになります。家康の祖父も父も正妻も長男も村正で死んでおり、家康自身も村正で傷を負い、家康に敵対した真田幸村の愛刀も村正だったということで、徳川家にわざわいをもたらす不吉な刀と言われるようになりました。

また世界には呪いの宝石と言われる宝石がいくつかあります。そのほとんどは、世界最高の宝石ということで王家や王妃の持ち物になり、その王家や王妃のもとで離婚や怪死などの不幸の逸話が生まれ、後の所有者に次々と不幸が引き継がれるというエピソードが生まれています。次のHPにいろいろ書いてあります。

https://karapaia.com/archives/52292028.html

さらに呪いの茶器という話もあります。「大井戸茶碗喜左衛門」という茶碗は、戦国時代に天下第一の名椀と言われ、徳川家康が豊臣秀頼と加藤清正にお茶をたててもてなした後、加藤清正は病死。この後、喜左衛門を入手して使用した者は次々に病死するということで、呪いの茶碗ということになっていきます。詳細はこちらのHPに書いてあります。

https://ameblo.jp/mirakuru460/entry-12483070772.html

こうしていろいろ調べて見ると、「呪われた〇〇」と言われるものには、ひとつの共通キーワードがあることが目につきます。

それは「最高」というワード。

当時最高のヴァイオリン、最高の装飾家、最高の刀工、最高の切れ味、最高の宝石、天下第一の名椀…

その所有者たちは、後にローマ教皇になる枢機卿、将軍徳川家康、各国の王や王妃たちという、これまた当時「最高」の権力者たち。

「最高」×「最高」=「呪い」 という数式でもあるかのよう。

最高を求めてやまない人間の欲望が行き過ぎると、「最高」が反転して、断絶や破滅や死という不幸が生まれるのでしょうか。

あるいは「最高」という言葉は、パンドラの箱を開ける呪文だったのでしょうか。

ところで、チェリーニのヴァイオリンを弾いて不幸に見舞われなかったのが19世紀ノルウェーを代表するヴァイオリニスト兼作曲家のオーレ・ブル。ブルは一貫してノルウェーの音楽に献身し、貧しい人のためにも演奏したとも言われており、「最高」という呪文を唱えることなく生きた人だったのかもしれません。

最後に今回の話に出てきた人物に関連する音楽を二曲どうぞ。

ベルリオーズ作曲、オペラ「ベンヴェヌート・チェリーニ」↓

オーレ・ブルのヴァイオリンコンチェルト↓

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