写真はアクイラの弦とキルシュナーの弦計算尺です。写真右上の長方形のものが弦計算尺です。ドイツの弦メーカー、キルシュナー社が出していて、これがあればどんな弦楽器が来ても、たちどころに適切な弦の太さを算出できます。
古楽器は弦の数は多いし、スケールはいろいろだしで、どんな弦の組み合わせにすればいいのかがなかなかわからないですが、この弦計算尺があれば、机上でわかるのです。
使い方は、まずAの音を何ヘルツにするかを設定します。普通は440ヘルツですが、時代によって変動がありますので、ヘルツの設定を変えることができます。
次にテンションを設定します。一弦にかかる力を例えば3キロくらいにするならニュートンの単位に換算して約30ニュートンに設定します。ウクレレだと大体一本あたり3キロから5キロの間くらい、古楽器は一本当たり2.5キロから3.5キロくらい、エレキギターだと7キロから9キロくらい、アコギだと10キロから15キロくらいといったところです。ボディの構造強度と、弦の総数と、テンション強めと弱めとどちらが好みかなどを総合考慮しながら、適当にキロ数を決めて設定します。
これだけ設定すれば、弦の材質ごとに各音程の弦の太さを測れる仕組みになっています。弦の材質は、ナイロン、フロロカーボン、ガット、スチールに分けて書いてあるので、どんな弦楽器でも適切な弦の太さがわかるのです。
書くと難しいですが慣れると案外簡単です。
古楽器や民族楽器の世界では、専用の弦が売ってないことが多かったり、ガット弦は強度がないうえに高価だったりということで、釣り糸を選定して使っている人がプロでも結構多いのですが、弦計算尺があれば、自分ですいすい適切な太さを選定できます。そして、音が気に入らなければ、ちょっと弦の太さを変えてテンションを上下させてみたりということも、自分で自由にできるようになります。
すごい道具を考える人がいるもんです。こんなものが世の中にあるなんて、知らない人の方が圧倒的に多いでしょう。のび太が泣きついてドラえもんがポケットから出してきた道具に匹敵します。