あれこれいろいろ

カンテレ概要

カンテレの概要について、次の研究発表がわかりやすかったので、そのまま引用させていただきます。

Kantele -森の民が求めた音色 - 岡田 実紀
1.カンテレの起源
カンテレは、今から2000年前から、すでに存在していた、と言われる、フィンランドの伝統楽器です。
カンテレができるまでに、当時の人々が影響を受けた楽器として、2つの説があります。1つはアラビアのカーヌーン。もう1つはロシアのGusliです。実際、そのどちらの楽器の要素も取り合わせたようなものに見えます。どちらにしても、カンテレは、商売、友人関係、結婚など、人間関係の交わりの中で作られた楽器と言えるでしょう。
カンテレ、または、それに大変近い楽器が盛んに作られ、演奏されていた地域は、現在はロシア領である、カレリア地方一体が中心です。そこからフィンランド国内の南東部地方、中西部地方へ広まっていきました。
またバルト三国では、ラトビアの楽器Kuokuleと、リトアニアの楽器Kankulesは、フィンランドのカンテレとほとんど同じ形をしています。エストニアのカンテレは、”長い羽を持つカンテレ”と言われているように、糸巻きより上の部分に向かって、羽のように板が伸びています。この羽の効果で、より大きな音が出ます。また、紐を首から提げて、フォークギターのように演奏されます。これは、エストニア独特のスタイルです。

2.カンテレの構造
カンテレは、森で仕事をしていた男たちが、仕事の合間に趣味で作った楽器です。彼らは、様々な木でカンテレを作り、どんな音がするかを試しました。現在は一般に、底と側面は松で、蓋は樺、白樺が使われています。
作り方は、初めの頃は、一本の丸太をノミでくりぬいて作るのが一般的でした。気に入った音が出るまで、底面から削ったり、側面から削ったりして試作を重ねたようです。また、上面から削って、別に作った蓋を上にかぶせ、白樺などの木の皮で作ったベルトで蓋を固定するタイプのものもありました。現在は、カンテレをいくつかの部分に分けて作り、接着剤で張り合わせる方法が一般的になっています。
弦は、初期には、馬の尻尾の毛や、動物の腸をねじったものが使われていました。その後丈夫な合金に変わり、そして、現在のスチール弦が一般に使われるようになりました。
また弦の数は、始め3~5弦でした。なぜなら、その頃の曲は、3つ、ないしは、5つの音によって曲が作られていたからです。その後、1800年代から、弦の数が増える傾向にありましたが、14~15弦までで止まりました。古くからの旋律や、カンテレの製造技術を保つために、それより多く弦を増やさなかったようです。20世紀初め頃になると、それまでより大きな形のカンテレや、半音階機構を備えたメカニックカンテレ、さらには、コンサートカンテレと呼ばれる新しいカンテレが作られるようになりました。そのようなカンテレの弦の数は、36~39弦もあります。

3.詩歌とカレワラ
カンテレは、曲だけで演奏される他に、ダンスの伴奏や、歌の伴奏としても使われていました。自分で詩を作り、そこに曲をつけて歌い、家族や友人、恋人などへ曲を聴かせていたのでしょう。フィンランドの民族叙事詩カレワラも、曲に合わせて歌い語られ、伝えられていた詩が集められたものです。当時の詩は、韻の踏み方が決められていたので、詩と曲の組み合わせを、いといろと変えて楽しんでいたようです。

4.演奏法
カンテレは、椅子に座って膝の上にのせて弾くか、または机の上に置いて弾きます。
奏法は、指の腹で、弦を一本ずつ爪弾いて弾く方法が、伝統的な弾きかたです。また、主、下属、属和音のコード進行を、指や小さな木の棒でたたいて弾く奏法も、昔からあります。また、5~15弦のカンテレなどは、弦によってどの指を使うかを決めて弾きます。新しい奏法としては、両人差し指だけで弾く奏法、ハーモニクス奏法、スライド奏法、他などもあり、かなり自由です。

5.伝承
もともとカンテレは家の中や森の中で弾かれ、そのメロディーや歌は、口伝により伝えられいました。また、小さな教会や家庭での礼拝では、賛美歌の伴奏楽器として、弓で弾く一弦カンテレが使われていました。
現在では、保育園や幼稚園、小学校の音楽教育の場で、5弦カンテレが使われています。

6.まとめ
カンテレを自在に弾けるのは、フィンランドでも、カンテレ演奏家や、愛好者にとどまっています。しかし、フィンランドの人々にとってカンテレが、愛すべき楽器であることは確かです。それは、カンテレが、自分たちの民族の歴史であり、誇りにもつながるからでしょう。
カンテレは、人々の祈り、願い、喜び、悲しみ、愛など、あらゆる感情を込めて作られ、弾かれた楽器です。その行為は、カンテレの美しい、透きとおった音色を聴けば、理解できるでしょう。そしてその音色は、今でも私たちの心をとらえるのに十分な力を持っています。

 

また次のページ(カンテレ奏者はざた雅子さんのページ)で、カンテレについて体系的な説明を学ぶことができます。☟

About Kantele-カンテレについて