楽器には、「運命的に出会う」ということがあるようです。その楽器のことを少しも考えていないときに、不意に出会ってしまうのです。
私にもそういう出会いがありました。私以外の人が作ったウクレレで大切にしている一本があるのですが、それはまさにそんな出会いでした。
もうかなり前のこと、その日私は、木製の本格リコーダーが欲しくなり、様々なリコーダーを調べたうえで、これと決めたものを買うために、10数万円の大金を持って楽器店にでかけました。そして、一本のウクレレに出会ってしまうのです。その日は、ウクレレのウの字も考えていなかったのに、リコーダーコーナーに行っても、どうしてもそのウクレレのところに戻って手にとってしまうのです。
そのウクレレは、大きなメーカーのものではありませんでした。私が知らない人が製作したものでした。でも、とにかくそのウクレレに呼ばれるように何度も手に持ってしまうのです。
値段は12万円ほどで、かなり大金です。
でも、私はその時ちょうど12万円をもっていました。リコーダーを買うためにおろしてきたお金です。
その楽器店を出るとき、私の手の中には、そのウクレレがありました。
うそみたいな話です。
そのウクレレに呼ばれて行ったかのような出会いで、十数万円のリコーダーが欲しいと思ったことさえも、実はウクレレに呼ばれてそう思ったのか？ というギモンも湧くくらいです。木製のリコーダーという特別なものが欲しいと思ったからこそ、わざわざ遠くまででかけてその楽器店に行ったのであって、そうでなければそのウクレレに出会うことはできないわけです。しかも金額までほぼ一致という、できすぎなくらいの不思議な出会いです。
今そのウクレレは、私のウクレレ作りに多大な影響を与えています。そのウクレレの音や作り方が、今の一十舎のウクレレにひとつの基準を与えてくれています。ですから、このウクレレを買ったことに間違いはありませんでした。ものすごく重要な出会いでした。
一十舎のウクレレも、そんな出会いのひとつになれたらいいなと思います。
